2014年01月09日 非常に強い寒気団の南下に伴い、日本海西部に突然ポーラローが発生した。 このポーラーローは9日午前6時、韓国東方海上の日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)上にて渦状擾乱として確認された。その後、この渦状擾乱は山陰沖まで達する頃には中心に台風類似の眼を持ったポーラローに発達した。一般的にポーラローは水平規模が小さいために地上天気図には描かれない事も多いが、小規模に反し中心付近の渦度が大きく、中心付近では時として台風並みの暴風雨(雪)を伴い、上陸地点に大災害をもたらす事も多い。だがポーラローは多種多様であり、分類上は一般的な低気圧として扱われるものの、その構造は一般的な温帯低気圧より熱帯低気圧(台風)に近い事が多い。更に、規模が小さくゲリラ的に発生し、上陸後は速やかに消滅するため、その生態には未だに謎も多い。 この度初めて、明るいうちにポーラローの中心への突入を果たし、タイムラプス動画撮影及び詳細な観測に成功した!。 尚、今回観測したものは傾圧不安定やCISKで発生する比較的大型のタイプと違い、JPCZの中で生じる風速シアと順圧不安定、及び海水からの顕熱だけで成長するものなので、ポーラローの種類では一番弱小なメソβ級に属するものであったが、それでも顕著な眼とストームチェーサーによる観測では最大瞬間風速25.6mを記録した。 |
||||
午前9時 山陰沖に発生した渦擾乱がポーラローに発達するのか9時の時点で定かではなく、チェースの決行を迷ったが、近年、寒気の南下が東日本に偏っているために山陰沖で発生するポーラローが稀になっている事を考慮すると、僅かでも可能性がある限りチャンスに賭けて午前10時にストームチェースを決行する事にした!。 |
||||
○はGPSから求めた観測ポイント 午前11時半、ポーラローの上陸が予想される島根県の(萩石見空港)前の海岸に到着した。 この時点では、雲量5~7で上空は晴れていて積雲があるだけで沖合にも特に高い雲は目視出来ず、僅か数十キロ沖に台風類似の低気圧があるとは到底思えない天候であった。ただし西風はかなり強く、波浪は3mでかなりの時化であった。 |
||||
正午、とにかく寒い!!余りの寒さで風速計を握る手がかじかんで観測機器の操作が困難になって来た。 |
||||
|
||||
12時半、気圧が僅かに下がり始め風が急に強くなって来たものの降水はない。 | ||||
12時50分、急に風が強まり吹雪、海上は視程が利かなくなった。 | ||||
13:00分、急に気圧が下がり始め、いよいよ風雨激しくなったので海岸にある東屋に避難する! アイウォールに差し掛ったようだ!、簡易風速計ではWSW22.9m/sを記録した!!。 |
||||
13時10分、突然風向きが変わり風雨収まった!!沖に晴れ間!眼?。 風速計ではGUST南3.3m/sだが、向きの定まらない突風のため、事実上計測不能。 |
||||
13時20分、GUST南南東3.3m/s 1014.8hPa にわか雨 沖に見えていた晴れ間は確認出来ない。 | ||||
13時30分、再び沖合に晴れ間が見えた!水平線に虹の一部確認した。 | ||||
13時45分、風速0m/s 静穏 沖合に晴れ間が見える。 | ||||
14時00分 風速0m/s 静穏 1014.3hPa(この時が今回観測された最低気圧である) | ||||
14時10分 風速GUST北北東9.5m/s 1015.1hPa 吹き返し始まったが、眼は未だ沖合から接近中だ!? | ||||
14時20分 にわか雨 眼と思われる晴れ間の中心が上空を通過したが、素晴らしく碧い晴れ間であった! | ||||
14時40分 眼の晴れ間は南側の山の中に隠れて行き、北側から物凄い勢いで壁雲が迫って来た!! | ||||
14時50分 雨強く 風速GUST北東25.6m/s 視程0 激しい吹き替えしで観測撤収した。 | ||||
14時 可視画像 眼がハッキリわかる。 |
14時 水蒸気画像 水蒸気画像で眼が暗いのは、乾燥した下降気流の存在を示す。 |
アメダスデータ ストームチェイスによる観測では低気圧の中心気圧は14.3hPaであった。 |
||
グラフはストームチェイスによるデータ(Gust、気圧)と最寄の空港のデータ(平均風速、Gust、風向、気温)である。 尚、気温の計測及び風向、平均風速はストームチェスの観測が不十分だったために、チェーサー位置から僅か1km以内にある空港のデータを以て代えさせて戴いた。 概要 ポーラローの中心は14時00分にほぼ頭上を通過したと観られ、風速等のデータから眼に入ったのは13時10分から14時30分までのおおよそ1時間20分と推定された。また、エコーの移動速度28km/hより求めた眼の直径はおおよそ36kmで、エコーとほぼ一致した。 眼の中は異常に青く澄んだ空が印象的で、これほど青い空は日蝕の時以外では見たことが無かったが、これは眼に中に下降気流があり乾燥している事や、成層圏が下がって来ている事等が考えられるがハッキリしない。 他、気温が進行方向側の壁雲内側で最も低くなっており、逆に後面壁雲の内側で高温を観測した。 これは、眼の中の下降気流による断熱圧縮やCISKが影響していると推測される。 尚、このポーラローの最大風速は18m/s程度と推定された。 (鉛直解析図や上層天気図は容量制限からここでは載せていない) EXIT |