2017年の冬は南の高気圧が強い為に西南日本まで寒気が入る事が無かった。
しかし、2月9日より寒気が西回りで入るようになり、3月2日には更に強い寒気が西南日本まで南下するため山陰沖に強いポーラLOWの発生が予想された。もし本格的なポーラLOWが発生した場合、山陰沖では2011年2月以来6年ぶりの快挙!である。
早速、上陸予想地点に近い出雲市のキララ浜に隣接したリゾートホテルに宿泊予約を入れ急いで出発した。
1日夕方に上陸予想地点であるホテルに到着したが、嵐の前の静けさなのか海は鏡のようで、深紅の日没が素晴らしかった!
翌日のストームチェースに期待を賭けて、とりあえず早目の睡眠に入った。

翌朝、ポーラーLOWの発生条件は十分過ぎる程揃っているが、明け方になっても全く発生の兆しが観られなかった。
500hPaの高層図を見ると、当地方は上層寒冷渦のド真ん中に位置し、発生しない方が異常としか思えない状況である。
だが、午前7時になっても一向に発生の兆しは観られず、失敗の色が濃くなって来た9時頃、ようやく隠岐の島付近でポーラーLOWが発生した。しかし、それはとんでもない位置であって、到底チェイスエリアから離れ過ぎていたため断念せざるを得なかったし、ポーラLOWそのものも低気圧性循環に纏まりが無く、浅く広がった状態のままで中心が定まらない状況であった。
午前9時、チェイスを諦めて失意のうちに機材を撤収して帰路に着く。
しかし、太田市を通過した10時頃から浜田沖に小さい渦中心の発生を確認!、急遽、浜田市付近で待機する事にした。
尚、参考までに事後解析による描画を載せておく事にする。
10時半、浜田市の東、おおよそ10キロ地点の海岸で観測機器を設置して待機することにした。
いやはや、ストームチェースには絶好のロケーションを発見!、近くにコンビニと水族館を尻目に気兼ねなく駐車するスペースに加え、人目にも付き難く、更に海抜も低いので気圧校正の必要もないし、公衆便所も設置されてあった。加えて景色が抜群だ!!。
今回のポーラーLOWは“鍋底”で、台風に例えると差し詰めモンスーンガイヤに近いようだ
レーダーエコー等から、中心はA,B,C,の3個があり、そのうちの「C」を追う事とした。
 
観測記録3月2日
11時00分 1006.0hPa 晴 南西5m
11時30分 1006.0hPa 晴 南西5m  (沖合にポーラLOWらしき?エコーが有るが、雨どころか青空覗く)
12時00分 1005.4hPa 驟雨 南西5m (正午頃から雨が降り出すが、風は余り強くない)
12時10分 1005.5hpa 雷雨 南西13m (イキナリの暴風雨になった、それは余りに突然やって来た!、更に激しい雷と落雷を伴い視界は全く利かなくなり、暴風で車が揺さぶられて、恐怖すら感じた。)
12時30分頃より、風雨が少し収まって沖合に雲の切れ間が見え始めたので、カメラと機材を下げて大急ぎで車を降りた!。
沖合を眺めると見事な雲渦が消えた!!、ポーラLOWの眼のようだ?、気が付いたら殆ど風が止んでいた。
12時35分 1005.5hPa 晴  西 3m
晴れ間はあっという間に過ぎ去って空は再び雲に閉ざされ、吹き返しが吹いてきたようだ。
12時55分 1005.7hPa 雨  西北西8m
13時30分 ****  雹 西北西10m
今回は期待に反して思わしい収穫は無かったのが残念でならない。
尚、この雲渦はポーラーローと言うより低圧部の中に生じたメゾβ級の小渦と判断した。
 
アメダス及び、事後解析によると浜田沖にある渦Cは700hPa付近で上層の寒冷Lの循環に同化しているように見える。
これら3個の渦は上層寒冷渦の中心を重心として周回しており、総観的には一つの低気圧と観る事も出来そうだ。