2005年9月6日、台風14号追跡記録。
この日、大型台風14号が九州を縦断する可能性が非常に大きくなったのでストームハンターに出動した!!。
このまま現在地点で待ち構えていても眼が通過する可能性はほぼ100%であったが、台風の速度が遅く深夜になってしまうために、明るいうちに通過すると見られる佐賀県まで遠征する事にした。残念ながら14号は眼が大きい質の悪い台風であったが、内域に6時間余り入って台風と共に移動しながら観察する事に成功した。

9月6日、ストームチェイサー決行!!
午前六時、台風は未だ九州の南をゆっくり北上中だった。中心気圧950hPa最大風速40m、暴風半径220kと大型の強い勢力であった。このまま進んだら、ハンターしなくても台風はこの町までやって来る。しかし、速度から計算したら、台風が「明るいうちに通過する地点」は福岡市までだろう?と判断したために、上陸地点である佐賀県に向う事にした。車で追跡出来る距離としてはギリギリであった。
早速、計測機器やカメラを調整する。カメラ二台、ビデオ一台、風速計、気圧計、温度計、そしてコンパスと地図とストップウオッチ、気象情報の要である携帯電話。しかし、ビデオカメラは防水ではないので役に立たず、その代わりに必要と感じたのはナビだったが、これだけは高く付くので未だに装着していない。

午前9時、関門橋は強風で通行止めだった。
仕方なくトンネルを通って九州に渡るが、高速が使えたのは福岡までで、台風の上陸が予想されていた佐賀までは国道3号線に乗ってひたすら走った。途中から急激に風雨が激しくなって来た。佐賀市内に入ったのは午後2時30分だった。968hPa、雨が激しい為に風速は計っていないが、目測では15〜20m位である。この時間、台風はここから40km南にある諫早市に上陸したらしい。放送では、上陸時の気圧965hPa、最大風速35mで、こちら「北」に毎時20kで進んでいた。この時の最大風速64KT暴風半径110NMを元に内域の半径を計算した所、84NM(海里)≒155kmとなった。すなわち、既に中心に入っているはずだが、眼と中心はズレてるために依然として暴風が続いていた。15時の段階でも風雨は激しく、車が横転しないように建物の横に寄せながら進める。

15時20分、966.5hPa、遠く有明海の上空がぼんやりと弧を描いて明るくなって来た!!。
15時30分、965.4hPa、NE4m、突然風雨が収まったかと思うや否や、真上を見上げたら積乱雲が裂けて薄曇の空から薄日が差し、遂に眼に入ったと判した。眼の中は薄曇で青空は見えず、北側を巨大な積乱雲が弧を描くように物凄い速度で流れて行くのが判る。
眼の中は蒸し暑く、高層雲に覆われており、その下には層積雲系の雲が渦を巻くように見えたが、最下層の雲は見られなかった。


15時35分、福富町 965.4hPa、風速0m 曇
15時44分、福富町 965.9hPa、風速0m 曇
18時00分、古賀市、968.9hPa、風速 北西2m 晴
21時00分、萩市  974.6hPa、− − ー ー
 
 
 14号の概要
2005年8月29日、マリアナ諸島に発生した熱帯低気圧は、9月2日にはフィリッピン東方海上で最大風速は50m、半径850k以内で15mに発達し、5日深夜から6日早朝に屋久島を通過、九州の西岸に沿って北上し、14時頃、長崎県諫早市付近に上陸が確認されたが、眼が巨大だった事を考えると、九州西岸に当る地域では長時間に渡り眼に入っていた地域も多かった。
上陸時の勢力は、965hPa、35m/sで、その後、17時に佐賀市、19時に福岡市付近の海上に達した。
その頃から台風は北東に向きを変え、22時頃には山口県下関市角島付近を通過して日本海に抜けた。
その時の勢力は970hPa、35mであったが、アメダスや、その後の通過地点でのデータでは975hPa、最大風速も30以下であった可能性が大きい。この件に関してはストームチェイスによる観測データでも気象庁の発表より5hPa程度高かった。

***暴風の概要
眼が非常に大きかったために、暴風域は220kmを超えた。
そのため、中心付近では広範囲に渡り弱風域となり、相対的に周辺部での風が強かったのが特徴で、特に台風から遠かった宮崎県で風が強い地域が目立った。諫早市に上陸した時の最大風速や暴風半径から求めた最大風速帯の半径は150kmもあり、これは気象台の観測データともほぼ一致したが、この台風が周辺部で風雨の強い「ドーナツ台風」であった事を示していた。また、この台風の上陸時の地上付近での渦度を計算したところ、おおよそ425x10(-6)/sとなり、これは台風としては中位のものであった。尚、この台風における風速の極値は、種子島で最大瞬間風速59.2mであった。

***雨の概要
14号は速度が非常に遅かったので、長時間に渡り広範囲で大雨になった所が多かった。特に南風が斜面を駆け上がった四国南東部や九州南東部での雨が多く、総雨量は宮崎県龍門1322mm、えびので1307mm、見立で1166mmと記録的豪雨であった。

***潮位
干潮と重なったために高潮による被害は少なかったが、種子島で180cm、山口県周南市では観測史上最高の237cmを記録した。
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