あまさぎ復活?  (平成15年2月 山陰中央新報)

正月になってアマサギが復活したという山陰中央新報の記事がでましたが、実はそんなに大量に捕れているわけではありません。私の網に入るのはせいぜい一日に5〜20匹程度で市場に出すよりも自家消費でなくなる程度の漁獲です。それでもこの2から3年、アマサギの姿を見なかったことを思えば「よくぞ生きていてくれた」と感動しながら網をあげています。

資源保護と増殖の取り組み

現在は産卵期になっており、卵をもったアマサギは照焼きなどにすると美味しいものです。しかし産卵期の親魚を無制限に捕獲してしまえば、また元の木阿弥になるおそれがありますから、ます網組合では「この時期のアマサギは市場に出さない」という申し合わせをして資源保護と増殖につとめています。せっかくのシーズンなのに申し訳ありませんが、卵をもったアマサギを賞味するのは2〜3年ほど待ってくださるようにお願いします。
(1)まず産卵場所である斐伊川河口部でアマサギをとることを禁止し、そのうえに産卵した場所をかき回して死滅させる恐れのあるシジミ漁も禁止しました。これにより魚は安心して産卵するものと期待しています。 孵化の準備
孵化場での作業
(2)ます網(定置網)に入ってしまったアマサギは生きたまま漁師の自宅へ持ち帰り、卵と精子を絞って受精させ、その受精卵をビニール袋に入れて平田にある内水面水産試験場に持ち込んで孵化させる事にしました。
(3)産卵の段階に至らないアマサギは、手早くバケツにいれて生きたまま大野町の湖岸につくったアマサギ孵化場へ持参します。そこに大きな水槽がありますので魚を放し入れて自然に産卵するのを待ちます。そうした卵は5月の連休頃にふかしますので、稚魚となったものを宍道湖へ放流するのです。

アマサギが宍道湖や大橋川を泳ぎ回る姿を夢見ながら

今までは魚がいないために網走湖や諏訪湖から受精卵を仕入れて孵化させたものを放流していましたが、幸いにも少し復活してきたので、ここでもうしばらく皆さんに辛抱して頂けば、宍道湖在来種である本来のアマサギが食卓にあがる日が来るのではないかと思います。

宍道湖の周囲の岸辺に昔のようなヨシを茂らせて水質浄化と稚魚の育成を支援するための予算が国土交通省からつきましたので、行政・研究機関・漁民が力をあわせてアマサギの復活に取り組んでいける環境が整いました。暑い夏をヨシの影で過ごした稚魚が、秋から冬にかけて宍道湖や大橋川を泳ぎ回る姿を夢見ながら、この冬は資源保護と増殖の仕事に取り組んで参ります。