あまさぎ漁−マス網

マス網の仕掛け

網は魚の性質を利用して仕掛けます。魚は、@夜は岸辺に休み、早朝から沖合いへ出る。A潮流に逆らうかたちで泳ぐ。B障害物があると、それに沿って沖合いへ向かう。これらを勘案して、まず道網という約百メートルの一枚張りの障害物を岸から約五百メートルの沖合いへ張ります。潮流は外海から大橋川を通って、東西に込んだり、下げたりしますので、道網はそれに垂直方向に、ほぼ南北に張ります。魚はこの道網に導かれて沖へ泳ぎます。道網の突き当たりにモンドルと云う最終的に魚を捕獲する筒袋状の網を三方向に設置します。これが一袋約七メートルで、竹を輪にしたものを五〜六本入れて筒の形態をつくり、その末端の網を結んで魚が行き止まりになるようにする訳です。毎朝の網上げは、このモンドルを引き上げることなのです。

網つけの準備

道網とモンドルの総延長は130メートル。これらをすべて湖に突き立てた竹によって支えるのです。ひとヒロに一本の目安で立てるとして約130本の真竹が必要です。秋の切り時を見計らって六寸口径の良く伸びた真竹を湖北の山から切り出します。湖底の泥へ突き立てるのに2メートル、水深が4メートル、水面から上は舟に立って胸の高さにしますので2メートル、あわせると必要な竹の長さは8メートル近くにもなります。この竹を秋鹿の港へ運び、長い鉄の棒を使ってフシを抜いて水に沈みやすくします。つぎにナタをふるって根元を鉛筆の形に尖らせます。湖底に突き立てるためです。
 まず前年に立てた竹を湖底から引き抜かねばなりません。抜いた竹は、湖底や水中にある部分は新品同様ですが、水位差の激しい湖面部分は一年で腐食しています。抜いた竹の汚れ方や海草とか貝類の付着具合で湖水の健康状況を判断しています。
 竹たては、日の出前から日没まで毎日十時間以上舟の上での重労働です。8メートルの太い竹を、まっすぐ縦にブクブクと沈めていきます。湖底にあたると満身の力をもたせかけて祈るように竹を突き立てていきます。真冬の烈風にも怒涛にも耐えて網を守り、湖の幸を護り給えと念じます。十日近くもこんな準備にかかって、やっと網を張る段取りになります。

漁期の仕事

漁が行われる十月半ばから三月末まで、起床は毎日五時になります。身支度をして五時半出航。道網の様子を見ながらモンドルの場所に舟を止めて袋網を引きずり上げます。袋網の底の結び目をほどくと捕獲された魚が銀鱗を踊らせる・・・・と云いたいところですが、荒れた翌日などはゴミの中で魚がぐったりしているという日が多いのです。三箇所のモンドルをあげて魚とゴミを出し、底を縛りなおして沈めるという作業を繰り返して帰港。すぐに自宅の玄関先に選別台を持ち出して魚種を選り分けて、出荷準備をします。