平成17年3月 一般質問

平成17年3月の定例県議会で次の一般質問を行いました。

人口の減少について (質問・答弁詳細へ)
  ☆人口減少時代を想定し、県独自の試算や将来予測を行った上での県の事業検討は?
  ☆中海・宍道湖圏域の県境を越えた一体的な活動で山陰の中核的な都市形成については?
  ☆県を超えた地方広域経済圏の考え方を持つべきだという考え方については?
  ☆本源的所得を生む産業としての農業、漁業の可能性については?
安来道路、江津道路について (質問・答弁詳細へ)

  ☆安来道路、江津道路に割引制度の適用を主張すべき
県立大学の統合、独立行政法人化について (質問・答弁詳細へ)
  ☆大学改革の実施に当たって、県立看護短大は現在の3年制修学から4年制大学に格上げすべき
  ☆統合ありきではなく、統合時点では県立大学の将来計画を描くべき
中海について (質問・答弁詳細へ)
  ☆これまでの中海問題は4者協議、国交省、農水省、島根、鳥取両県で行われていたが、
    今後はこれに環境省を加えて5者協議に切りかえるべき
  ☆森山堤50メートル開削に加えて、もう一つ50メートル開削が行われるのか?
  ☆中浦水門の撤去工法の変更の理由と内容は?
  ☆中海の本庄工区に新たな名前、愛称をつける
  ☆国立の汽水湖研究所設置を国に働きかけ、島根県に誘致しよう
水鳥・湿地センターの松江市誘致について (質問・答弁詳細へ)
  ☆環境省に対して啓発や調査のための拠点となる水鳥・湿地センターの松江市誘致を
松江市の教科書への取り上げを観光面などでの積極的活用について (質問・答弁詳細へ)
  ☆教科書の影響は、松江市内だけにとどまらず、島根県全体に及ぶ
    観光面から地域振興の大きなきっかけとしてとらえ、積極的に生かしていくべき
教育事務所の配置について (質問・答弁詳細へ)
  ☆教育事務所の役割は?、市町村合併による教育事務所の配置は?
県立高校の授業料の納付期日について (質問・答弁詳細へ)
  ☆納付期日を25日か月末に変更を
選挙運動用ポスター掲示について (質問・答弁詳細へ)
  ☆選挙運動のむだを省き、合理的にし、候補者が立候補しやすくするとともに、
    候補者間の機会均等をできるだけ保障するため、
    候補者が行うポスター張りに市町村選管または県選管が公的に関与する制度を

 質問を終えるに当たり一言申し述べます。この県議会の議場は、松江藩の御金蔵があったところです。松江藩は、不昧公政権時代に大胆な行財政改革と全国レベルの産業振興をしたことをきっかけに、幕末まで全国でも有数の裕福な藩財政を確立しました。毎年税収の約3倍の、民間会社でいうと別途積立金ができるほどで、蔵が不足して、その御有り金を入れるための御金蔵を次々と建て増しをした松江藩の繁栄を象徴する場所です。知事さん、ここを掘り返せば大判小判の何ぼかが出るかもしれませんけれども、島根が持っている固有の人材と資源、そこにこそ豊富な島根の宝は埋まっていると思っております。それを掘り起こし、県民を奮い立たせるような県政運営を実行していただきますように切に要望いたします。

人口の減少について

【質問】
 昨年秋、書店を経営する私の友人から、人口減少経済の新しい公式という題名の本を勧められました。大都市が今後高齢化に直撃される一方、島根県を例に挙げ、地方が豊かになる可能性も論じた好著と紹介されたものです。資料やデータ解析を駆使した難解な文章でしたけれども、この本は昨年上半期のベスト経済書101冊の第1位にランキングされました。知事はこれを読まれたのかどうかお尋ねします。

 質問の第1は、この本で述べられているような来るべき人口減少時代を想定し、県独自の試算や将来予測を行った上での県の事業検討がなされているのでしょうか。もしないとすれば、将来予測の基礎研究をする考えはないかお尋ねします。
 第2は、今後地方全体として人口が減少する中で、核となる都市には人口が集中し、その反面、都市としての機能を維持できないほど人口が減少する都市も出てくるであろうと予測されています。
 島根県の場合、中山間地問題がある反面、中海・宍道湖圏域の県境を越えた一体的な活動で山陰の中核的な都市形成が必要であるという、こういう声が高まっています。この点についてはどうお考えでしょうか。
 第3は、経済活動という観点からは、県を単位とした経済運営の考え方を改め、県を超えた地方広域経済圏の考え方を持つべきだと提唱していますが、こうした考え方についてはどのような見解をお持ちでしょうか。
 最後に、地域が成り立つ基礎条件として地域内の住民を顧客とするサービス産業だけでなく、地域外から所得を稼ぎ出す産業が必要であるとして、そうした産業による所得を本源的所得としていますが、この本源的所得を生む産業としての農業、漁業の可能性についてはどのようにお考えか御所見を伺います。
【知事】
 まず、人口減少経済の新しい公式という著書に関する私の所見についてであります。
 私も、この著書は読みました。人口が減少し高齢化した社会であっても、適切に対応することによって自立的、持続的な発展は可能になるという説に、本県の将来を考える上で大変興味深く思っています。
 次に、人口減少を想定した県独自の試算や将来についての予測を行ったかどうかということについてであります。
 このたびの総合計画を策定する前提として、本県人口の将来予測を国立社会保障・人口問題研究所の推計に加えて、今後の施策効果などを踏まえた本県独自の予測も行ったところです。いずれの場合においても、本県の人口は減少するという予測でありました。
 次に、山陰の中核的都市形成の必要性についてであります。
 著書では、今後人口が減少する中で、地方においても都市部への人口集中が進むという予測のもとに、受け皿としての高次都市機能を担う都市の必要性が提唱されております。こうした中で、中海・宍道湖圏域は、日本海側有数の人口集積地で、都市基盤や交通体系の整備が進んでいることから、高次都市機能を担う受け皿として県境を越えた山陰地方の中核都市圏を形成していく必要があると考えています。
 次に、地方広域経済圏についてであります。

 著書で指摘しておりますように、私も地域経済を考える上で行政区域を超えた広域的視点で経済の活性化を図ることは重要だと考えています。
 次に、本源的所得を生む産業としての農業、漁業の可能性についてであります。
 人口減少社会であっても、地域が自立的・持続的に発展していくためには、地域内で経済が循環することのほか、やはり地域外から所得を獲得する産業の振興が必要であり、これなくして本県は存立し得ません。本県が県外から得た所得のうち、農林水産業が占める割合は、平成12年において約7%ではありますが、ブランド化による高付加価値化や食品製造との複合による健康食品産業の形成、さらにはしまね田舎ツーリズムの展開などにより御指摘のような本源的所得を生み出したいと考えています。
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安来道路、江津道路について

【質問】
 島根県の高速道路は建設促進、そして西へ進む西進が命題です。一方で、建設された道路が県民にとって利用しやすいことも大切です。県東部地域で高速交通の直面する課題があります。高規格幹線道路には、道路建設に対する債務償還制度がありますが、山陰自動車道の松江玉造から三刀屋木次間は高速国道と呼ばれ、全国プール制での償還方式。安来道路、江津道路は一般有料道路と言われ、個別採算方式での償還制度になっています。

 山陰道の一般有料道路安来道は、平成10年3月に供用開始されました。利用台数は1日約6,000台と推定されていましたが、現在9,000台以上の利用があります。これは全国第3位の収支率で、日本道路公団ホームページの償還計画と実績資料に基づいて推計すると、おおむね9年後には道路建設事業債務の償還が完了するものと思われます。
 しかし、日本道路公団民営化に伴い、一般有料道路は、バイパス型とネットワーク型に分けられ、バイパス型は国に移管し、ネットワーク型は日本道路公団が一括管理をする、こういう方針です。一般有料道路安来道路がこのネットワーク型に組み入れられると、おおむね9年後に通行料金が無料になると思われたものが、制度改正によって民営化後の45年後になるのではないかと危惧の念を抱いています。この長期間の高速料金負担は、島根県東部の県民にとって気軽に高速道路を利用するチャンスが遠のくことになり、非常に不幸なことです。
 鳥取県は、米子道路の無料化を国交省に要請していますし、日本道路公団管轄の境水道大橋が無料道路になったように、安来道路は現行の個別償還制度での償還を主張すべきです。そのためには、国交省並びに日本道路公団に働きかけをする必要があると考えますが、道路知事を自認される澄田知事の力を発揮できる局面と思います。知事の御見解をお尋ねします。
 また、高速道路の利用促進を目指してETC割引が導入されましたが、一般有料道路の利用者にとって不公平です。高速道路を走ると、平成16年11月1日から深夜30%割引が、平成17年1月11日から朝夕の通勤割引50%が受けられます。しかし、安来道路、江津道路など一般有料道路は、この割引の対象外とされています。同じ高速道路で国民に同じサービスを提供する施設であり、しかも4車線でなく2車線とサービス水準が低いのに料金が高いままというのは不公平です。おまけに9年後には無料になると思っておったのが45年後だというのでは納得いきません。割引制度の適用を主張すべきです。知事のお考えをお伺いします。
【知事】
 日本道路公団の民営化に当たっての一般有料道路の取り扱いは、平成15年12月の政府与党申し合わせによるものであります。本県の一般有料道路である安来道路及び江津道路は、ネットワーク型、バイパス型のいずれに区分けされるか公式にはまだ明らかにされておりませんが、いずれの路線も高速自動車国道と一体となって機能しており、ネットワーク型に類するものと認識しております。
 議員御指摘の安来道路の償還の考え方については、同様な性格を持つ江津道路の取り扱いと整合を図る必要があることから、課題が多いと思いますが国の意向を確認しつつ検討してまいりたいと思います。
 次に、料金割引制度の適用についてであります。
 現在実施されているETC搭載車を対象にした通勤割引などについては、安来道路、江津道路などの一般有料道路には適用がありません。これは全国料金プール制路線と個別償還路線の相違による全国的な取り扱いではありますが、利用者の理解が得られにくいものと考えております。
 現在、日本道路公団において、一般有料道路についても高速自動車国道と同様に弾力的な料金を導入するための検討がなされており、また本県としても昨年度と今年度で実施いたしました社会実験の結果を踏まえ、安来道路、江津道路についても利用者の負担を軽減し、より一層の利用促進を図るため、地域の実情に合わせた弾力的な割引料金を早期に導入するよう主張してまいります。
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県立大学の統合、独立行政法人化について

【質問】
 県立3大学統合法人化が平成19年4月実現を目指して検討されています。大学改革の実施に当たって、県立看護短大は現在の3年制修学から4年制大学に格上げすべきだと思います。看護師養成の4年制大学化の流れは全国的に進んでいます。これまで国公立の医学部に併設されていた短大はすべて廃止され、現在、国公立短大で医療看護系技術者養成をしている全国の17大学で、平成20年までに4大化し閉校を予定する短大は10大学に及びます。残り7大学でも、半数以上が4大化の検討が行われていると聞いております。
 このことは、保健医療分野での高度化は、これに従事する看護者の質的な向上を求めており、3年制の修学年限では無理があるということです。平成14年度県立看護学科の卒業生78人の進路は、就職が48人、残りの19人がもう1年助産学などの専攻科に進学し、10人が各大学に編入をしています。大学編入の場合は、もう一度3年生からやり直しということになるので、1年間がむだになります。
 県内においても看護学生を志望する高校生は4大化志向が強まっていること、県立看護短大は70%以上の県内出身者が修学し県内就職をするという地域特性を持っていることなど、高度の看護師養成は、もう時代の趨勢としてとらえ、独立行政法人化に当たって4大化は必須です。県立大学の統合法人化を進めるにしても、県立看護短大の4大化構想をついえさせてはいけないと考えますが、知事の御見解を伺います。
 次に、先般松江市は、島根女子短期大学の4大化と観光学科設置を要望されました。全国的に短大の減少と4年制化が進み、この10年ほどで短大進学率は半減をしています。
 松江市は、ことし4月から松江市立女子高というのがあるんですが、ここの国際文化科を国際文化観光科と改め、国際文化観光コースと観光コース、この二つを設けて地元観光産業の期待やニーズにこたえるための新学科を設置されました。
 この際私は、県と松江市が連携をして、少子化時代の大学運営を図るべきだと思います。県の大学法人化計画というのは、県立大学を私立大学並みに運用することだと思いますので、一案を申し述べます。
 県は、島根女短を4年制大学にし観光学科をつくる。松江市は、松江市立女子高の観光コースに県外からの特別の枠を設けて、入れば高校から大学へそのまま進学できる、こんなシステムをつくれば、入学者の確保と同時に卒業後に島根県の観光分野への貢献が期待できる人材の育成ができる、こういうふうに思います。島根女子短期大学の方向性と観光学科設置について知事の御所見を伺います。
 財政再建策としての県立大学の統合、独立法人化はわからないでもありません。まず統合ありきではなく、統合時点では県立大学の将来計画を描くべきだと思いますが、知事はいかがお考えでしょうかお尋ねします。
【知事】
 このたびの大学改革につきましては、地域や時代の要請にこたえ、自主的かつ自立的な運営を図ると同時に、将来を見据えた魅力ある大学づくりを進めることを目指して、統合、法人化などの改革を行うこととしており、本年秋にその基本計画を取りまとめたいと考えております。
 島根女子短期大学については、この改革の中で職業教育や教養教育の充実、地域連携や地域資源に着目した学科再編を行うこととしており、この再編により観光振興に貢献できる人材の養成も図られるものと考えております。
 また、看護短期大学については、既に地域看護学と助産学について専攻科を設置しておりますが、これらの専攻科が今回大学評価・学位授与機構の認定を受け、平成17年度から、その修了者は4年制大学と同等の学士号が取得できるようにいたしました。
 このような状況も踏まえて、島根女子短期大学及び看護短期大学につきましては、当面短期大学としての存続を前提とした再編を図ることとしますが、基本計画の中では将来的な選択肢として4年制への移行を図る場合の課題の整理も行いたいと考えております。
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中海について

【質問】
 かねて懸案の中海問題が両県知事の政治決断で動き出したことは評価したく思います。島根県の場合は、大橋川改修計画のために本庄工区を開削するという政治判断が強く、本来の目的である中海の再生という観点が希薄です。したがって、これまでの中海問題は4者協議、国交省、農水省、島根、鳥取両県で行われていましたが、今後はこれに環境省を加えて5者協議に切りかえるべきだと思います。
 宍道湖・中海は、環境省の指定湖沼であり、湖沼環境については環境省が管轄します。自然再生推進法という法律があり、これは国交省、農水省、それに環境省、この3省の共管で事務局は環境省が担当していますが、宍道湖・中海の環境改善を進める上では最も対応しやすい形と言えます。両県で森山堤の開削が合意に至り、その開削シミュレーションの評価などに当たっても環境省に参加を呼びかけて5者協議の場で検討すべきだと思いますが、知事のお考えをお聞かせください。
 建設興業タイムスという業界紙のことし1月18日の記事によれば、農政局では森山堤に設置されている本庄排水機場の撤去方法にも着手。これまで上屋のみ撤去する案が示されているが、堤防下を通る排水樋管を取り除く場合には、橋梁新設、橋長50から70メートルが見込まれるとあります。もしこの記事が本当なら、森山堤50メートル開削に加えて、もう一つ50メートル開削が行われるのか、その真偽をお尋ねします。
 私は、平成15年9月、総務委員会で中浦水門の撤去方法について質問しました。そのときの答弁内容と、先般2月10日開かれた中海に関する協議会で示された撤去工法は違っていますが、なぜ変更されたのか、変更された内容などを御説明ください。
 中海協議会の説明資料によると、中浦閘門の撤去期間は2年、施設を矢板で囲んで水を抜き取るというドライ工法で工事をするようです。その間に洪水が起こった場合の影響については、通水断面積を確保してあり、治水上問題はないと農水省は記述しています。しかし、現況より危険性が高まるのは事実です。そもそも堤防を開削して洪水の憂いをなくした後で閘門撤去工事をするのが順序ではないのか、見解をお尋ねします。
 最後に中海について提案があります。
 まず、中海の本庄工区ですが、ここは中海の中で堤防に囲まれたもう一つの湖となっております。珍しい形をした湖中湖です。これまで本庄工区と呼んできましたが、これは工事名として残すとしても、これからは工事の海から生産の海へ生まれ変わるわけですから、新たに名前、名称をつけることを提案します。例えば干拓淡水化問題で御苦労された知事のお名前から澄田湖とか、中海に浮かぶ大根島にちなんで大根島湖など、その名称を全国公募してはどうでしょうか。湖も人に見詰められて美しくなるといいます。知事の御所見を伺います。
 いま一つは、宍道湖・中海は、わずか30キロメートルほどの水系にアユとシラウオとタツノオトシゴが同居するという生態系を持つ汽水域です。かねてより私は、この極東地域における貴重で未解明な汽水域を研究対象にした国立の汽水湖研究所設置を国に働きかけ、島根県に誘致する価値があると信じています。政策企画局にそのための研究会をつくられるよう提案します。政策企画局長の前向きな御所見をお尋ねします。
【知事】
 中海に関する協議会に環境省を加えて検討することについてであります。
 この協議会は、平成13年6月12日に鳥取県知事との間で交わした斐伊川水系大橋川の測量、調査及び設計の実施についての確認書に基づき、中海に関する諸課題についての調整を図るため平成13年8月29日に設置されました。

 協議する内容については、まず、中浦水門の取り扱いとこれに伴い発生する雇用問題、二つ目には、中海の水質を初めとする環境改善、三つ目には、淡水化中止に伴う代替水源確保対策の実施についてです。これらの課題について、島根・鳥取両県、農林水産省、国土交通省の4者で協議をしています。協議会では、これまで6回の会議を開催し、今や残された課題は、干拓堤防開削の取り扱いのみではないかと考えており、本県としては、今の中海に関する協議会に環境省が参画することについてはその必要はないものと考えていますが、昨年末の両県知事会談で中海の水質改善の一層の促進を図るために両県で引き続き協議することで合意していますので、その中で検討してみたいと思います。
 次に、中海の本庄工区に新たな名前、愛称をつけるということの御提案についてであります。
 昭和38年に着手された国営干拓事業では、松江市本庄町等の地先海面を干拓する計画から、地元になじみやすい本庄という地区名をつけ、これまで進められてきました。私としては、本年11月のラムサール条約への登録を目指して世界に発信しようと全力で取り組んでおります現在、本庄工区を含めた中海全体を一体的に発展させたいとの思いでありますことから、議員御提案のような新たな愛称をつける考え、今のところ思い浮かんでおりませんが、地元など関係者の意見を伺う必要もあろうかと思っております。
 次に、宍道湖・中海への水鳥・湿地センターの誘致についてであります。
 宍道湖及び中海の豊かな自然を守り、後世に引き継いでいくために、自然観察の場の確保、普及啓発、調査研究などを進め県民の環境保全への理解を促進することは極めて重要であると考えております。このため、両湖に生息するさまざまな生き物の生態や環境を学ぶ施設として宍道湖自然館ゴビウスを整備し、関係団体とも連携しながら環境教育の実施などに取り組んでまいりました。
政策企画局長
 国立汽水湖研究所の誘致に向けた研究会についてお答えします。
 我が国でもまれな汽水湖である宍道湖・中海は、淡水性、海水性の両方の動植物が生息する多様な自然環境を有しており、県民にさまざまな恵沢をもたらすかけがえのない財産であることは論をまたないところであります。
 ところで、国立大学法人島根大学では、平成4年に我が国初の汽水域研究機関として汽水域研究センターを設置し、平成9年には中海を臨む八束町江島の地に中海分室を付設しました。これを拠点に変化に富む汽水環境や個性豊かな生物相の調査研究に精力的に取り組まれており、大学にはこれまで汽水域研究センターを核として世界水準の研究実績があると聞いております。
 議員御提案の国立汽水湖研究所の誘致については、中海圏域の発展を図る上で一つのお考え方であると思います。私は、まずは大学側といろいろと意見の交換をしてまいりたいと思っております。
農林水産部長
 中海問題に関する御質問3点についてお答えいたします。
 まず、本庄排水機場の排水樋管の報道についてであります。事業主体である中国四国農政局によれば、排水樋管の取り扱いについては、中海に関する協議会において協議していくものであり、今回の発注はあくまでも今後議論を行っていく上での参考とするために業務発注したとのことであります。
 なお、本県からは、さきの中海に関する協議会において森山堤防を50メートル開削するとともに、本庄排水機場の排水樋管も利用する場合のシミュレーションを行うよう申し入れたところであります。
 次に、中浦水門の撤去工法の変更についてであります。
 中国四国農政局からは、平成15年に行われた第4回の中海に関する協議会において、海上工事で実績のある巨大な鉄の棒を落下させることによりコンクリートを砕くという砕岩棒による撤去工法が提示されておりました。その後、よりよい方法で実施したいことから専門家等の意見を取り入れて検討するといういわゆる設計VE検討会の意見を受けて、さらなる詳細な検討が行われ、先般の第6回協議会において、より確実な撤去の実施、経済性及び環境へのさらなる配慮の観点から水門柱部はコンクリートをブロック状に切断するワイヤーソー工法に変更するとともに、閘門部については矢板により仮締め切りを行い大型ブレーカーにより破砕する工法に変更することを検討しているとの説明がありました。
 3点目に堤防開削を行った後に閘門撤去工事を行うべきではないかとの御指摘についてであります。
 中四国農政局によれば、閘門撤去に先立ち鳥取県側の水門柱や護岸の一部を撤去することから、これによる通水断面の増加分が矢板締め切りによる通水断面の減少分を上回っており、閘門撤去時の治水上の安全性は確保されているとのことであります。
 いずれにいたしましても、洪水時の対策も含めて河川管理者との協議の中で適切に対応されるものと思いますが、県といたしましては、治水上の安全性の確保が図られることは必要であるというふうに考えております。以上であります。
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水鳥・湿地センターの松江市誘致について

【質問】
県はことし11月、宍道湖・中海のラムサール条約登録湿地を目指して取り組んでおられます。関係者の御苦労と御努力に敬意を表します。
 条約登録後、私は、環境省に対して啓発や調査のための拠点となる水鳥・湿地センターの松江市誘致を提案します。これまで国内で登録されている13地域には、さまざまな機能を持つ拠点施設がつくられています。最近では、環境省直轄で100%負担によって施設整備が行われています。多いところでは10億円を超す建設費がかけられています。せっかく登録されてできる唯一の施設ですから、国に対して整備を要望すべきと考えます。
 また、平成17年度には、環境省の地方機関が再編されることになっております。そこで先ほどの水鳥・湿地センターに国立公園内の許認可、鳥獣保護区に関する国の事務所ですね、これを併設させる可能性を探るべきだと思いますが、あわせて御所見を伺います。
 なお、施設の場所は、長年迷惑をかけた松江市本庄地区内に設置されてしかるべきと思います。17年度は宮島沼に着工予定ですから、宍道湖・中海は18年度に実現するように環境省に対して働きかけをすべきだと思います。ちょうど今年3月末に小池百合子環境大臣が松江においでになる予定ですから、その機会に知事はお会いになって、このことについての実現要請をしていただきたいと考えますが、御所見を伺います。
【知事】
 御指摘の水鳥・湿地センターは、ラムサール条約登録湿地13カ所のうち6カ所において国が水鳥の観察等のための施設として整備し、地元市町が中心となって管理運営しているところであります。
 議員御提案の本庄地区への水鳥・湿地センターの誘致については、地元松江市の考えもお聞きしながら、既存の観察施設との関係等も勘案して、その取り扱いを検討していく必要があると考えております。
 また、環境省の事務所を水鳥・湿地センターに併設することについては、今後センターの建設が具体化した場合にその可能性について国と議論してまいりたいと考えております。
 なお、小池環境大臣にお会いしましたら、宍道湖と中海の本年11月のラムサール条約登録がぜひとも実現するよう要請したいと考えており、あわせて条約登録後の賢明な利用を促進するための取り組みへの支援についてもお願いしたいと考えております。
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松江市の教科書への取り上げを観光面などでの積極的活用について

【質問】
 ことしの4月から小学校6年生の社会科の教科書として、この東京書籍のものが採用されました。冒頭には見開きページで松江市が取り上げられています。風土記の丘を出発点に荒神谷遺跡、加茂岩倉遺跡、出雲阿国、松江城や小泉八雲、富田城などをめぐって歴史を調べようという記述です。これは県教委や松江市教委がつくった郷土学習の副読本などではなくて、全国のおよそ6割の児童が最低3年間は使う文部科学省検定済みの正式な教科書です。
 出雲地方は、古代から中世、近世、近代そして現代までの歴史が断絶することなく1カ所に集まる全国でも比類のない地域だということを編さん者たちが認識しての採用と聞いています。戦前は古事記や山中鹿介が国史教科書に取り上げられたことで全国の目が出雲に向いていたのですが、戦後しばらく取り残されていたわけです。ここに来て出雲の国の歴史が復活するようでうれしく思っています。
 せっかくのこのチャンスを地元でどのように利用するか、方策を大至急立てるべきです。既に松江市では歴史資料館の展示内容について、小学生の社会科学習のフォローになるような方策を議論しています。また、松江市観光協会を中心に観光ボランティアガイド100人を増強して、小学生相手にどのように松江の歴史を紹介し説明するかという研修会も始めています。この教科書の影響は、松江市内だけにとどまらず、島根県全体に及ぶと思われますので、観光面から地域振興の大きなきっかけとしてとらえ、積極的に生かしていくべきだと考えますが、知事の御所見を伺います。
 また、教科書への取り上げは郷土愛への醸成を図る契機だと考えますので教育長の御所見を伺います。
【知事】
松江市の教科書への取り上げを観光面などで積極的に生かすべきではないかとのお尋ねにお答えをします。
 ことしの4月から小学校6年生で使用される東京書籍発行の社会科教科書の巻頭に松江市を中心とする出雲地方が大きく取り上げられております。これは出雲には、古代から近代まで子供が興味を持ちやすい素材がそろっており、初めて学ぶ日本の歴史の教材として最もふさわしいとの評価を受けたものであり、私自身非常にうれしく思っております。この教科書につきましては、本県では全県で、また全国でもほぼ半数の小学校で使用されると聞いており、日本中で多くの児童が出雲地方の歴史に触れることとなります。このことは、本県の認知度の向上に大いに役立つとともに出雲の歴史文化への理解を深めてもらう上で大きな意義があり、また現在取り組んでいる観光トップブランド創出事業の追い風となるばかりでなく、古代出雲歴史博物館のオープンに向けても大きな弾みになるものと確信しております。
 また、地元においては、これを契機に教科書に掲載された歴史や文化遺産をめぐるためのマップの作成や交通手段の確保、ボランティアガイドの養成など受入体制整備の取り組みが始まっており、修学旅行や家族旅行などの新たな観光需要の掘り起こしにつながるものと期待しております。
 県といたしましても、こうした動きを積極的に支援し、平成18年4月から5月に実施するJRデスティネーションキャンペーンなども活用しながら情報発信に努め、さらなる観光客誘致を図ってまいります。
 また、議員御指摘のとおり、この教科書の掲載効果を全県に広げていく取り組みも重要であり、出雲を拠点に石見や隠岐の歴史資源と連携した周遊性、滞在性のある旅行商品の造成についても検討してまいります。
 それと同時に継続的な観光客誘致を図るためには、それぞれの地域が広く住民の方々を巻き込んだ取り組みを行うことが大切であり、みずからの地域の魅力をその地域の人に語ってもらうふるさと案内人制度を来年度から創設し、地域ぐるみでおもてなしの心を持って観光客を迎える体制整備に努めてまいります。このような地域が一体となった観光振興の取り組みにより、地域経済の活性化や雇用の拡大など観光面からの地域振興を図ってまいりたいと考えております。
【教育長】
 本県では、しまね教育ビジョン21にも示しておりますように、島根の特色を生かした教育として、自然、歴史、文化、伝統行事、産業などの教育資源を生かした教育活動を通して、ふるさとへの愛着を深め、ふるさとに誇りを持つ子供を育てるふるさと教育に力を入れているところであります。
 小学校6年生の社会科においては、主要な人物や文化遺産を中心に、自分たちの生活の歴史的背景や我が国の歴史や先人の働きについて学習することになっております。
 本県で新年度から使用される社会科の教科書に松江市を中心とした地域の歴史や文化財、伝統行事などが取り上げられましたことは、島根の子供たちがこの地域について学習するのみならず、今度は自分の住んでいる地域についての学習意欲の向上にもつながるものであります。このようにふるさと教育と社会科学習の充実を図ることは、本県、また各地域の特色や魅力を認識し、郷土を愛する心の醸成に大きな効果をもたらすものと考えております。今後も引き続き島根県にかかわる内容がですね、社会科だけでなくて多くの科目の教科書に登載されることを大いに期待するところであります。
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教育事務所の配置について

【質問】
県内の教育事務所は、現在五つの圏域に事務所が置かれています。全国の設置状況を見ますと、教育事務所を設置していないところなど地理的条件等によってさまざまです。県内で市町村合併が進み、松江市など大規模な行政組織が誕生し、それに伴い現在56ある教育委員会は21に減少する見込みです。そうなると、これまでの教育事務所の所掌事務や組織体制の見直しが必要になってくると思います。教育事務所の役割をお聞かせ願い、市町村合併による教育事務所の配置をどうお考えか、教育長の御所見を伺います。
【教育長】
 教育事務所は、松江、出雲、浜田、益田及び隠岐の島の5カ所に設置し、主に各管内市町村立学校の管理運営、教育課程、学習指導等の取り扱いに関する指導助言、またその学校の教職員の人事関係、研修等を所管しております。市町村教育委員会と連携を図りながら、各学校へ直接指導助言してきております。
 市町村合併に伴う教育事務所のあり方については、全庁的な地方機関見直し検討が進められる中、教育委員会においても平成15年度に教育庁内に検討チームを設置して検討を行っているところであります。具体的には、市町村合併後の県と市町村との役割分担と業務内容の見直し、それから市町村との連絡調整のあり方の構築、さらには他の教育機関も含めた体制整備等について検討を行っているところであります。
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県立高校の授業料の納付期日について

【質問】
 県立高校の授業料の納付期日は毎月15日になっています。近年、授業料の滞納が多くなり、学校からの督促に対して、給料日が25日なので15日は一番お金がない時期になる。せめて25日か月末が引き落としであれば支障なく支払うことができるという弁明もあるようです。県庁が15日の給料日だから、恐らく事務的に15日を納付日としたものでしょうが、一般的な中小企業の給料日は毎月25日が多いわけです。せめて25日か月末が納付日ならば、わずかの日にちの移動で民間企業に勤める父兄から喜ばれ、納付率向上の一助になるとの声を聞きます。納付期日を変更されたらと思いますが、教育長に伺います。
【教育長】
 授業料の納付については、島根県立高等学校等条例で入学時及び卒業時を除いて、通常はその月の1日から15日までに納付しなければならないと規定しております。実際には、PTA会費などと合わせて毎月15日に口座振替により徴収をしております。この日に口座からの引き落としができず未納となった保護者に対しましては、納付の督促について書面で通知し、学校の事務室において現金で徴収する、いただいておるという状況にあります。
 議員から御提案のありました民間企業等の給料支給日に対応した授業料納付日の変更につきましては、納付率の改善や企業にお勤めの保護者の利便性の向上などに影響もあると考えられますので、今後学校現場やPTAの御意見を勘案して、他県あるいは私立高校の状況なども参考にしながらですね、検討してまいります。以上でございます
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選挙運動用ポスター掲示について

【質問】
市町村合併に伴い地方議員の選挙区が拡大をします。特に1選挙区当たりの選挙運動用ポスター掲示場の数は、私の松江選挙区の場合、これまで352カ所だったものが、合併によって有権者が30%増加するだけで2倍以上の740カ所に増大します。県内最大の増大選挙区は旧大原郡です。松江とほぼ同じ329カ所だった数が、想定される新しい雲南飯石選挙区になると約2.5倍の813カ所になります。県議各選挙区の平均掲示場数が約1.6倍になります。選挙区が拡大した候補者にとってポスターを張る作業だけでも非常な負担がのしかかります。ついては、選挙運動のむだを省き、合理的にし、候補者が立候補しやすくするとともに、候補者間の機会均等をできるだけ保障するため、候補者が行うポスター張りに市町村選管または県選管が公的に関与する制度をつくるよう提案します。
 私案ですが、ポスター張りに要する経費は候補者が負担するものの、希望すればその候補者のポスター張りは市町村選管または県選管が取りまとめて一括して民間企業に業務委託するやり方です。公設民営方式と言えますが、こうした制度を設けることができないものでしょうか。そのためには、法制度の改正が必要か、あるいは県独自の制度創設は可能か、どうすれば実現できるかということです。所管部長に御見解をお尋ねします。
地域振興部長
 かたい法律解釈になりますが、選挙運動用ポスターに関する選挙公営制度といたしましては、公職選挙法において二つの制度が限定的に定められております。一つは、市町村選挙管理委員会においてポスター掲示場を設置する制度であり、もう一つは、一定の制限の範囲内で候補者のポスター印刷経費を公費負担する制度であります。また、このほかに市町村選挙管理委員会には、候補者に対してポスター掲示場の設置場所図面を交付したり、あるいは単純労務としてのポスター張りを請け負う者をあっせんするなどの便宜を図るよう努めるものとするという規定も設けられております。
 しかしながら、候補者が行うポスター張り自体について、例えば議員私案として御提案の地方公共団体が契約の当事者となるような公的な関与を行うことは現行制度では認めておりません。行おうとしますと、新たな選挙公営制度を創設する法改正などが必要でありまして、地方公共団体独自の判断による実施は困難であると考えております。
 なお、市町村合併などに伴います地方選挙を取り巻く状況変化がございますので、こうしたことを踏まえまして、選挙公営制度のあり方を各政党間とか国会において大いに議論されるということは望ましいものと考えております。
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