ジャパンオープン’01

今回の仕事は滞在期間が短く、しかも初日は
雨にたたられて、張った本数としては、今までで
一番少なかったように思います。
が、たくさんの印象的な出来事がありました。
まず、工具を事前に宿泊先のホテルに送って
おいたのですが、手違いで別のホテルに荷物が
届いてしまって、ゴーセンのスタッフの方が
わざわざ荷物を受け取りにいってくださって、
本当に助かりました。ありがとうございました。
初日は一日中、雨。試合はセンターコートでしかできない、選手達は練習もできない、とあって
ラケットを持ち込む選手はほとんどいなかったですね。
私はこの日、携帯電話も財布もホテルに置いてきてしまったので非常に困りました。
手持ち無沙汰のあまり売店を見に行っても財布がないので何も買えないし。
二日目、天気は持ち直し、たくさんの選手達がラケットを持ち込んできました。
「はい、これ、10時まで」と、この日最初の仕事が回ってきました。
その時、ちょっと事情があって、私の工具を他の人が使っていたのです。
しかたなく余っている工具を使って張ることになったのですが、時間的には余裕があったので
『10時までなら30分以上ある、楽勝だな』と余裕かまして張り始めました。
ところが9時45分にそのラケットを使う選手のコーチがラケットを取りにきたのです。
『ええ?早過ぎる!』と思っていると、ゴーセンの川端ストリンガーが、そのコーチに言いました。
「Five minutes」
その時、まだ横糸を3本くらいしか張ってなかったんです。『あと5分って、張れるわけない!』
私は真っ青になって張っていたのですが、手の空いているストリンガーがよせばいいのに、
そのコーチに椅子を勧めたのです。コーチはどっかり座って待ち始めました。
『やめてくれー、どっか行ってくれー』と思いつつも引き攣った笑顔で張り続けました。
ところが、最後の最後、ノットを作るはずの穴にガットが通らないんです。何度やっても。
ナチュラルだったので、糸の先が潰れるたびにカットしていってたら、だんだん短くなってきました。
そのころにはコーチは椅子から立ち上がり、マシンのそばで待っていました。額に青筋うかべて。
で、もう我慢できなくなって、僕の工具を使っているストリンガーの所に行って「ちょっと貸して」
と、自分の工具を持ってきてチャレンジしたら、1秒で入りました。
使い慣れた自分の工具の重要性を改めて認識しましたね。
なんとか張り終えてコーチにラケットを渡すと彼は「Thank you」と言い、すごい勢いで
走り去りました。あの状況でも「Thank you」と言ってくれるとは・・・救われましたね。
この日は結構張ったのですが、1本、ポリのガットを張ってる最中に切ってしまいました。
店では時々切るのですが、このときは、切れると予想していないときに突発的に切れたので
もー驚きました。しかも、選手が持ち込んだ外国のメーカーのガットだったので、スペアもない。
どうやって丸く治めたかはナイショです。ここでは言えません。
珍しいラケットも張りました。YONEXのラケットで、MP5i というラケットだったのですが、
MP5とはデザインも少し違うし、ほかのストリンガーのみなさんも、見たことない、とのことでした。
「この(i)ってなんだろう」、「インターナショナルかな」、「インテリジェンスかな」
なんてみんなでがやがや言っていると、私の師匠の松本ストリンガーが言いました。
「iモードやろ!」
今回、ホテルは選手達と同じホテルに泊まることができました。
ホテルと会場の往復も選手達の専用バスを利用させていただいたのですが、2日目の朝、
私がバスに乗って出発を待っていると、選手達がぞろぞろ乗ってきました。
そして、なんとモニカ・セレシュ選手が私の席の前の席に座ったのです。
なぜだか、ガットを張るよりもずっと緊張しましたね。
今回は私の会社の都合で、滞在期間がとても短く、他のストリンガーのみなさんに
ご迷惑をかけたと思います。
次からは、少しでも長く滞在できるよう努力いたします。