怪談・恋する大佐

まただ。
去り行く女性の後姿を見つつ、カスカル大佐は頭を抱えた。
おかしい。
最近、クローディア女医と通路で出会う頻度が異常に多い。
しかも彼女の態度も、今までと違う。やけに冷たかったり、無視されたり。
しかも、見た印象が会うたびに違う。ノッポになったり、チビになったり、デブになったり…。
だけど、顔を見れば、間違い無くクローディア女医の顔だった。
一度、メンタル・クリニックに行ってみるか…。

「ふむ、判りました、大佐。あなたが通路で出会った女性たちは、みんな別人です。それをあなたが、同じ一人の女性と誤って認識しただけの話です」
「すると、私の目の錯覚だったと…」
「そうです。第一、最近のクローディア女医は忙しくて…」
ドクターが、クルリといすを回転させて、カスカルの方を向く。
恰幅のいい男性医師の胴体の首から上には、クローディア女医の顔。
「診察室から一歩も外へ出ていませんわ」
カスカルは、そのまま気を失った。


カスカルのほほをグッキーが軽く叩く。
グッキー「おい、起きろよ、カスカル」「ったく、クローディアも悪戯が過ぎるよ」
クローディア「あら、グッキー、あなたにそう言われるとは思わなかったわ」「私はただ、しばらく仕事に専念するために、仮面製作者のバヴァグに頼んで、男の医師に変装してただけよ」「色気ついた男たちに邪魔されないようにね」「ま、これはサウナスーツにもなってるから、ダイエットにもなったし」
グッキー「で、その間、艦内の女性搭乗員たちが、彼女そっくりに変装してたんだよ、バヴァグに頼んでさ。判ったかい、カスカル」
カスカル「で、何故…」
グッキー「もちろん!」
クローディア「貴方をからかうためよ」

  2006.8.1 

グルエルフィン銀河遠征中。

アルサイド・スロー・バウァグ=太陽系艦隊随一の仮面製作者。228巻闘技場惑星では、タクヴォリオンを一角獣に変身させた他、他のメンバーをオルコノルに変装させた。