危険な男

メルバル・カソムは、突然倒れた。テレキネスで足元をすくわれたみたいだ。
そして、見えない力で地面に押しつけられる。
…グッキーの奴め。カソムの脳裏に悪戯好きのネズミ・ビーバーの顔が浮かんだ。

…ん。急に暗くなった。頭上に大きな物体が出現したみたいだ。
地面に押しつけられたまま上半身をひねって上を見たカソムは、恐怖のあまり叫び声をあげた。
巨大な恐竜の足裏がカソム目掛けて下りてくる。

ズシーン。
恐竜の足は、カソムを踏み潰し、周囲の地面にくっきりとその痕跡を残して上がった。
カソムは、恐怖に歪んた顔のまま、しばらく気絶していたみたいだ。
身体的には桁外れにタフなエルトルス人も、精神的には意外にもろい。

「やぁ、カソム、起きなよ。とっくに気がついてんだろ」
「グッキーィ。これは何の冗談だ」
カソムは服についたホコリを払いながら詰問した。
「例の映画の撮影さ。ゴジラ2332年版の。おかげていいシーンが撮れたよ」
グッキーの肩に、シガ星人のレミーが姿を見せる。
「やっぱりゴジラに踏み潰される役は、私より君の方が適任だったろう。シガ星人をエキストラにすれば制作費が安くすむって失礼な」
「いてて、ほんの軽い冗談だったのに、こんな大仕掛けな装置を造ってまでやり返すなんて、過激すぎるぞ」
「そうさ、私の名前は、レミー・デンジャー。文字通り危険な男さ」

2006.4.26