アトランとレディ

私の名は、アトラン。年齢は1万歳とちょっとだが、いまだ独身。なにせこの年になると、若い女性とはイマイチ話が合わない。しかし、独身主義者というわけではない。

というわけで、今日は仮装お見合いパーティーなるものに来ている。あらかじめ手渡された写真を手に、簡単な仮装をしている女性を見つけ出すという趣向だ。
 こういう洒落たアイデァ、嫌いではない。ただ、パーティーを仕切っているのがグッキーという事だけが、頭の隅に引っ掛かる。

 パーティーも中盤に差し掛かり、参加者のほとんどがカップル成立しているが、私のパートナーはまだ見つからない。
 おい、グッキー、本当にこの写真のレディ、今日きているのか?。
 私は改めて写真を取り出して見た。グッキーに言わせると、社会経験が豊富な女性だそうだ。
 その時、

 私は肩をとんとんを叩かれた。
杖で、た。
失礼な。
「おや、アルゴンの退位皇帝殿ではないかい」
「お、お前は、ティーバ。ティーパ・リオルダン。なぜここに」
「私だって、独身だよ。充分に参加資格はあるさ」
「独身?。その前に自分の年齢を考えろ。杖が必要な年齢になったら、こういうパーティーは遠慮するものだ」
「おやおや、あんたに年齢のことを言う資格があるのかい?」
「…」

「ところでアトラン。その写真のレディを探しているのかね」
「そうだ。この若若しい乙女をだ」
「その写真の女性…」
「知ってるのか?」
「100年ちょっと前の私だよ」
 そう言うと、老いた毒蛇が、ポッとほほを赤らめた。

    2006.5.24

ベリーローダンシリーズ・カビンサイクルの頃。