グッキーの紹介
私の名はアトラン。故郷アルゴン帝国を離れ、一万年以上の昔からこの地球にいる。
その間、親密になった地球人女性の数は…。
おそらく、おおかたの予想を大きく下回るだろう。
私の好みに合うタイプの女性とはめったにめぐり合うことがない。
どんなタイプかって?。
そう、赤い目に、ふんわりとした真っ白い毛。
つまり、典型的なアルゴン女性。
地球では、めったに出会えないタイプだ。
ある日、グッキーが私の元に遊びにきた。
なんでも、シティのはずれに、私好みの女性がいる店がオープンしたというのだ。
情熱的に赤く潤んだ瞳に、雪のように真っ白な毛。
そこまで聞くと、そこがどんな店かと問うのも忘れ、私はグッキーの手を取った。
「すぐに連れて行ってくれ」
「オーケー」
そしてテレポート。
テレポートから復帰したとたん、私の周囲はざわめきに包まれた。
たくさんの小動物たち。
つまり、ここはペットショップ。
そして、私の目の前には、赤い目の白ウサギが…。
「グッキー!」
振り下ろした拳が空を切る。
テレポートで逃げるのは、グッキーのいつもの手だ。
私は踵を返すと、すぐにその店を出た。
いつまでも、グッキーの悪ふざけに付き合う義理はない。
ちょうど目の前に止まってたロボットタクシーに乗り込み、行く先を告げた。
シュッと音がして、グッキーが空中から現れる。
店の奥にいた女店主のひざの上だ。
「あら、グッキー。きょうは何の御用」
「うん、めずらしい客人を連れてきたんだけどね、なんか誤解があったみたいで、すぐに帰っちゃった」
「そう、残念ね」
赤い目に真っ白な髪の毛という典型的なアルゴン人美女の女店主は、あっさりとそう言った。
2005.11.2