国際法廷

「被告は、独裁者の圧政により食料不足の問題を抱える北の某国に、人道的支援以外の目的である機械を提供した。間違いありませんか」
「はい、認めます。決して人道的な理由とはいえません」
「その機械は、独裁者の自宅に設置され、独裁者本人しか使用していないそうですが、これはどういうことですかね」
「はい、機械を提供する条件として、この機械は一般市民の使用は絶対に許可しないでほしい。ただ、独裁者本人のみが使用してほしいと条件をつけ、提供しました」
法廷内に批難の声が高まる。
「ふむ、貿易制限措置の対象となっているあの独裁国家に、その独裁者だけが使用する目的で最先端の機械を提供する。有罪は間違いないところだが…、最後に質問する。その機械は何かね」

「はい、シンドラー社製のエレベーターです」

法廷は、一時の静寂の後、賞賛の拍手と「無罪」を要求する声が支配した。

2006.6.15 シンドラー社製のエレベーターで事故多発のニュースより。