人魚の願い

「なるほど、陸の人間に、下半身が魚ではなく人間だったら、結婚してもいいと言われたか…」
人魚は、恥ずかしそうに頷いた。
魔女は、2種類の薬を取り出して、人魚に渡した。
「こっちの薬を飲むと、下半身が人間になる。ただし、副作用で上半身が魚になってしまう」「その人間の注文は、下半身が人間になることだけだろう」
「もうひとつの薬は、この薬の解毒剤じゃ。ただし、下半身にしか作用しない。つまり、頭の先から尻尾まで魚になってしまうぞ」
人魚は、しばらく迷っていたがやがて決意をかため、二つの薬を貰うと、魔女のもとから去っていった。


陸の方へ泳いでいく人魚を見送ってから、魔女は奥の部屋に入った。
そこには、まだ幼い人魚たちの世話をする人間ぐらいの大きさの魚の姿があった。
「やれやれ、また同じことの繰り返しか…」
  
2006.9.16