夢みる人魚

人けのない海岸に倒れている美女。
そこへ現れた人間の若者。
若者は駆けより…。

なるほど、そういう夢のような恋をしたいから、人間になりたいと…。
人魚は、恥ずかしそうに頷いた。

魔女は人間になるための薬と、もう一つの薬を渡した。
「これが人間の姿になる薬じゃ」「そしてこっちが、いわゆるホレ薬じゃ。目が覚めて最初に出会った独身の若い男性に一目惚れするように調合してある」「知っての通り、人魚のフェロモンはその国でその瞬間、もっとも注目されている独身男性を選んで作用する」

人魚は期待に満ちた顔で、魔女が手渡した薬を飲むと、陸へと急いだ。人魚の下半身がみるみるうちに、人間の足に変化していく。海岸についた人魚はそのまま眠り、そして目覚めた時…。

「おっと言い忘れていた。独身の若い男性といっても、ハンサムばかりじゃないって…。まぁいいか。あのホレ薬を飲んだら、そんなことは気にならなくなるし」

       ▽▽▽

ちょうどその頃、陸の人間世界では、24時間テレビの企画で、アンガールズの二人が100キロマラソンを完走していた。
司会者が、ゴールした二人にいろいろとインタピュ−をした。
「明日はどうします?」
「一人で、どこか人けのない海岸にでもいってみたいですね。急に行ってみたくなりました」

2006.9.16