お金、貸してください

20年前、
「すいませんが、お金、貸してもらえませんか」
突然、声をかけられた。
見ると、変な服装をしたひ弱そうな青年だ。
「ぼくの持ってるお金、この国では使えないんです」
外国人?。いや、どう見ても日本人だ。
「千円でいいんです」
「はい、これ」
面倒くさいから、千円札を手渡した。
その青年に、なぜか赤の他人とは思えない雰囲気があったせいでもある。
「あ、ありがとうございます」
青年は、深々と頭を下げ、ポケットから奇麗な箱を取り出した。
「これ、お礼です。20年後に開けて見て下さい。いいですが、絶対に20年間は開けてはいけませんよ」
青年はその箱を押しつけて去っていった。

20年後の今日、箱を開けて見た。中に入ってたのは500円硬貨が2枚。
??????。
発行年度を見ると、平成18年。
??????。
20年前に貰った箱の中に、なぜ今年の新硬貨が?。
??????。

青年は、タイムトラベラーだったのか?。
しかし、時間旅行はまだ可能になっていない。
もっと未来からの時間旅行者。
それが目的の時代より20年ばかり過去に行き過ぎたのか…。

時間を間違える失敗は、私の専売特許といっていい。
未来人にも、私のようなドジがいるのか。
ふと、可笑しさがこみあげてきた。

2006.4.30