裏の御山でポチがなく

その日、ポチが狂ったように鳴きはじめ、私を裏山へと引っ張ってきた。
私はみょうな胸騒ぎがした。
ポチは、ある場所に来ると、そこを掘り返すようなしぐさをした。

「ここ掘れ、ワンワン。ダイヤの指輪が埋まってるぞ」
犬語翻訳機でポチが吠え続ける理由はわかった。
しかし…、
ダイヤの指輪欲しさにそこを掘り返すことは出来ない。

私はあの時のことを思い出した。
殺害した妻の死体を埋める時、指輪をはずし忘れたことを。

ポチ、ごめんな。
私は近くにあった石を拾い、ポチの頭めがけて振り下ろした。

2006.12.3