落語・河童のかんちがい

え〜、毎度ばかばかしいお話を一席。

水の中に住んでいる河童。
実は、陸の生活に憧れてました。
だけど、陸で暮らそうとすれば、人間の姿にならなければいけません。

ある雨の日、一匹の河童が、岩の上に上がり、
神様にお願いをしました。
「どうかボクを人間の姿にしてください」

その時、稲光が走り、河童の耳にだけ聞こえる声がしました。
「よかろう。その願い、かなえてやろう」
ピカッ、ドーンと、河童めがけて雷が落ちてきた。
「ただし、元は河童だと、人間にバレたと思ったその時がお前の最後だぞ」
河童は、気を失い…。

目覚めると、人間の姿になってました。
近くの民家から着物を無断拝借、つまり盗んで着た河童くん、人間になったからには、人間らしい名前がいるな。雷に打たれて人間になったのだから、雷のライって名前なんかどうかな。そんなことを考えなから、ふらりふらりと街中にやってきました。

へーえ、これが人間の街かぁ。
きょろきょろと、あたりを見回しているうちに、どんどん時間だけが過ぎていき、おなかが空いてきました。
しまったぁ、食べ物はどうやって手に入れたらいいんだ。
哀しいかな、元河童の彼は、食堂で食べるとか、お店で食べ物を買うという知恵はありません。第一、お金を持っていない。

腹がへった。腹が…。なにか食いもの…。
そんな彼の鼻先に、美味しそうな匂いが漂ってきました。
こ、これは、きゅうりだぁ。
見ると、通りの向こう側から、天びん棒を担いた野菜売りが近づいてきます。
「きゅうり〜、きゅうり〜、採れたてのみずみずしいきゅうりぃ」

きゅうりは河童の好物ですから、これ以上の誘惑はありません。
彼は、その野菜売りのそばに行くと、ざるの中のきゅうりをムンズとつかみ、そのまま逃げだしました。
「あ、お客さん、お代、お代」
かまわず逃げる。
「さては、貴様、かっぱらいだなぁ、このぉ、まてぇ、かっぱらい野郎っ」
その声を聞いたとたん、
「しまった。河童ってバレた」

河童の雷公のお話、これにて終わりでございます。

2007.3.3