二代目浦島太郎
浦島太郎が竜宮城を去って数百年の歳月がたちました。
城の奥で、乙姫さまは退屈を持て余しています。
印象に残る思い出と言えば、浦島太郎を招待したあの時のことばかり。
乙姫は、亀を呼んでこっそり訊ねました。
「あの浦島とかいう男、今ごろどうしてるかのう」
「とっくに死んでますよ」
バシッと乙姫様は手にした扇で亀の頭を叩きました。
「いてて、姫さまぁ〜、ボクに何かうらみでも…」
「うらみなどど、そんなことは無い。ただ、お前を見ると、なぜか浦島殿が恋しくなってのう」
続く。
乙姫さまに亀が提案しました。
「そうだ。ボクがもう一度、海岸にいって誰か連れてきましょうか」
乙姫さまは、ポッと顔を赤らめ一言「お願いね」
「ではさっそく」と部屋から出ようとした亀を引きとめ、もう一言、
「なるべく美形の…、もちろん男よ」
「判ってますよ。姫さまとボクは何百年って長い付き合いじゃないですか。姫さまの好みはこの亀の頭…」
「何でそこで口を閉ざすの?」
「いえ、別に」
「いい、もしブオトコなんか連れてきたら、その時がお前の千年目だからね」
そして。
亀が男を連れて来た日から竜宮城は、連日連夜のドンチャン騒ぎ。
そして男が竜宮城から帰る日、なぜか見送りの中に乙姫さまの姿がありません。
代わりに亀が二つの玉手箱を持ってきました。
「乙姫さまからの伝言です。この一つ目の箱は絶対に開けてはいけません。家に帰ったらすぐ、誰にも見つからない場所に隠してください。それから二つ目の箱、これは家に貴方一人だけになってから開けてください」
そして、男は亀の背に乗り、海岸に帰ってきました。
「ああ言われたけど、一つ目の箱には何が入ってるのだろう?」
「私と貴方の…」手にした箱から、かすかに声が聞こえます。
「あれ、乙姫さまの声が聞こえる。もしかして、この箱…」
男は、一つ目の箱を手にし、紐を解いて開こうとしました。
「あ、駄目、開けちゃ駄目」
「嫌っ、止めて」
「その箱には…」
「開けたら、わたし…」
二つ目の箱から、乙姫さまの懇願するような声が洩れてきます。
そして、男が箱を開けたとたん、白い煙がポアンと出て、男は一気に年をとってしまいました。
「だから、止めてって言ったのに」
二つ目の箱からシクシクと泣き声が洩れてきました。
「あの箱には貴方と私の老いを閉じ込めていたのに」
男が二つ目の箱を開けると、小さな老婆が泣いていました。
終り
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あっ、開けたら白い煙になって消えちゃった。残念。
2008.2.13