自動販売機
おら、セールスマンに勧められて、道端に缶ジュースの自動販売機を置くことにしただ。
炎天下のこの夏、ここを通るときに、ちょうど冷たいジュースが飲みたくなる場所だぁ。
めったに人は通らない場所だけど、それならばと、置いてみただ。
今日、巡回セールスの人が売れたジュースの補充にきただ。
意外にたくさん売れてただ。
でも販売機から回収した売上金と売れた本数に差があるのがおかしいって、クビひねってただ。
おら、そんな細かいことは、気にしないだ。
今日、販売機メーカーの人が、調べに来ただ。
その結果、販売機の横っぱらをドンと叩くと、お金を入れないでも、ジュースが出るってわかっただ。
ずっと見張ってて、犯人つかまえましょう、なんて言ってたが、おら、断っただ。
炎天下のうだるような暑さの中、飲みたい奴は飲めばええ。
なんか、自動販売機もおらの意見に賛成みたいだ。
そんな雰囲気が伝わってくる。
おらも、この自動販売機、可愛くなってきただ。とてもただの機械とは思えねえ。
そして、誰もみていない、真夏の暑い時刻。
横っぱらをドンと叩き、出てきたジュースをゴクリと飲む。
(あ〜、うめぇ。こんな暑い最中だ。ジュースの一本や二本飲んでも、罰はあたらないだろう)
(オーナーも、飲みたい奴は飲めばええって言ってたし)
自動販売機は、そう思考した。
終り2008.8.16