夢の再生業 

「ふう〜、ずいぶん壊してくれたな」
 その原因となった住人の気配が完全に無くなってからが、彼の仕事だ。
 破壊された自然をオリジナルに近い状態に再生する。
 砂漠化した不毛の大地を、草原に再生する。
  もしその場にいるはずのない怪生物がいれば退治し、ノーマルな生物を呼び戻すべく務める。

 しかし、全てに完璧な作業が可能なわけではない。
 広大な森林だった場所が、復元不可能なほど破壊されたために、ちっぽけな自然公園としてごく一部のイメージを残すのが精一杯だったことがある。
 きれいに澄んでいた水が毒に汚染されたため、危険区域として立ち入り禁止エリアにせざるをえなかったこともある。
 
 彼はもくもくと作業を続ける。
 もし彼を仕事ぶりを見る者がいたとしたら、奇跡を起こしているようにも、魔法を使っているようにも見えるだろう。

 彼の作業負担を軽くするためには、住民が破壊を控えればいい。
 簡単な理屈だ。
 だけど不可能に近い事でもある。
 住民は、再生の仕事をしている彼の存在を知らない。
 もし、彼の事を知ったとしても、その程度の事で住民が破壊活動を止めるはずがない。
 住民は、自分がこの世界の主人であり、何をするのも自由だと、思いこんでいる。

「よし、まぁこんなところだろう」
 彼が作業を中断し、その場を立ち去る。

そろそろ住民がこの世界を訪れる時間だ。
 現実の世界から、この夢の世界へ。

2004.5.4