The Story of Art Gallery Coffee shop Memories

15.黄昏時の画廊茶館
 目次
 メニューを乗せたイーゼルを店内に入れると。
 今日の営業はお終いです。
「瞳子ちゃん、お腹空いたの」
 先ほどから、カウンターへと突っ伏している遙さん。
「ケーキが食べたいの」
 突っ伏したままで、ぴくりとも動かない遙さん。
「はいはい」
 可愛い結衣ちゃんみたいです。
 私は肩をすくめて頷くと。
 ととんっ! と、弾むような足どりで。
 よいしょっ! と、開く大きな冷蔵庫の大きな扉。
 まぁるいフルーツケーキを取り出しました。
 色とりどりの果物を挟んだ、ふわっふわのスポンジを、
 キルシュの香りが上品な、たっぷりの生クリームで包みました。
 刃を温めたナイフで、手早くケーキを切り分けようとしましたが。
(ええと……これで足りるのでしょうか?)
 私は、ほうっと溜息をひとつ。
「瞳子特製、フルーツたっぷりのケーキです!」
 私はぺこりとお辞儀をひとつ。
 ホールのまま、ケーキをカウンターの上へと置きました。
「お腹を空かせた遙さん、どうぞたくさん召し上がれ」
「いい香り、とっても綺麗ね。食べるのがもったいないわ!」
 甘い香りにくすぐられ、飛び起きて歓声を上げる遙さん。
(でも、食べちゃうんですよね?)
 ひとくち食べれば、心がふわっと温まる。
 甘〜いケーキには、少しほろ苦いブレンドを添えましょう……。
 
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