お薦め図書

はじめに

このページでは,読者がクリスチャンかどうかに関係なく,私がお薦めする本を紹介します。 本の解説と共に書誌情報も書いておきますので,本を購入される時などの参考になさって下さい。 本の分類は日本十進分類法(NDC:Nippon Decimal Classification)新訂9版に準拠していますので,公共図書館で本を見つける時の参考になると思います。 各本の定価は,私がその本を購入した時のものです。 このページが,良い本との出会いのきっかけとなれば幸いです。

総記

図書館. 図書館学

『図書館であそぼう 知的発見のすすめ』(辻由美著)

現代は情報過多の時代であり,どれだけ知識そのものを知っているかということよりも,どれだけ上手に必要な情報に辿り着くかが重要となってきている。 図書館は必要な情報を得るための重要な道具の一つであるが,その使い方をよく知らない人も少なくないと思う。 本書は,著者が日常どのように図書館を利用しているかについて面白く述べられており,読んでいくうちに図書館の実態や抱える問題なども明らかになっていく。 また,情報検索のヒントなども得ることができる。 本書を通して,図書館の上手な利用者となって欲しい。

書名:『図書館であそぼう 知的発見のすすめ』,著者:辻由美
出版者:講談社,出版年:1999年,シリーズ名:講談社現代新書;1453
ISBN 4-06-149453-8,定価:660円(税別)
NDC: 010.4

哲学

『正しく考えるために』(岩崎武雄著)

物事を正しく考えることは,人がよりよく生きるためには必要不可欠である。 正しく考えるには,形式的に正しく考えるだけでなく,内容においても正しく考えられていなければならない。 また,そのための心構えとしての批判的精神を養うことも肝要である。 本書では,正しく考え,正しく判断するための基礎知識を述べると同時に,誤りやすい点についても具体例をあげて分かりやすく示している。 正しく考えることは,よりよく生きるための最も基本的なことであり,かつ人生を左右するほどの重要なことなので,本書は特に青年に読んで欲しい

書名:『正しく考えるために』,著者:岩崎武雄
出版者:講談社,出版年:1972年,シリーズ名:講談社現代新書;285
ISBN 4-06-115685-3,定価:640円(税別)
NDC: 104

『哲学のすすめ』(岩崎武雄著)

哲学というと一見高尚な学問のように聞こえるかもしれないが,人は誰でも哲学を持っている。 哲学とは生きる上での原理であり,よりよく生きようと考えるところから自然に発生してくるものである。 本書はこのような内容から始まり,哲学の限界,哲学と科学の違いなどを述べ,哲学はなぜ必要かということを丁寧に教えてくれる。 具体的な例については同じ著者の書である『正しく考えるために』と重複している部分もあり,著者の主張も一貫しているので,両方とも読むと,著者の考えをより深く理解できるだろう。

書名:『哲学のすすめ』,著者:岩崎武雄
出版者:講談社,出版年:1966年,シリーズ名:講談社現代新書;66
ISBN 4-06-115466-4,定価:640円(税別)
NDC: 104

『論理と哲学の世界』(吉田夏彦著)

本書は哲学の入門書と言えるのだが,論理学との関連性を考慮しながら書かれたのが特徴的である。 そもそも哲学は論理的に厳密に議論を進めようとするので,哲学を学ぶ際には論理学の知識も必要になってくる。 しかし現代の日本の教育現場では,少なくとも大学レベルにならないと,まともに論理学を学ぶことはない。 その欠点を埋めつつ,哲学とはどんなことを考える学問なのかを平易に説いたのが本書である。 全8章収録。

書名:『論理と哲学の世界』,著者:吉田夏彦
出版者:新潮社,出版年:1977年,シリーズ名:新潮選書
ISBN 4-10-600191-8,定価:1200円(税別)
NDC: 104

哲学各論

『パラドックスの哲学』(R・M・セインズブリー著;一ノ瀬正樹訳)

パラドックスと言えば,ゼノンのパラドックスや嘘つきのパラドックスなどが思い浮かぶだろう。 ほとんどのパラドックスは簡単に述べることができるし,聞けば解いてみようという気になる。 しかし著者は言う,「パラドックスを解くのは楽しいが,時には深刻な問題を提起する」。 本書で扱われている有名なパラドックスは,どれもみな大きな論争を巻き起こしている深刻な問題であるにもかかわらず,日本では哲学や論理学の問題として主題的に論じられることはほとんどなかったようである。 その穴埋めとしても,本書は有用だと思われる。 また,本書は哲学の専門家以外の人々を念頭において書かれているので,解説は丁寧で分かり易い。 しかし読者が問題を理解し,自発的に思索を進めるためには,少なくとも大学レベルの思考力があるのが望ましいと思う。

書名:『パラドックスの哲学』第1版,著者:R・M・セインズブリー,訳者:一ノ瀬正樹
出版者:勁草書房,出版年:1993年
ISBN 4-326-15277-X,定価:3700円(税別)
NDC: 116

西洋哲学

『哲学からのメッセージ』(木原武一著)

哲学書には難しい用語を用いて書かれたものも多く,たとえ通読できたとしても一体何を言いたいのか,よくわからないこともあると思う。 本書では7人の哲学者について,彼らが伝えたかったこと,あるいは著者が彼らから感じ取ったことを紹介している。 著者が選んだ7人の哲学者は,カント,デカルト,ニーチェ,キルケゴール,パスカル,ヘーゲル,ソクラテスである。 本の内容には文学的な表現がみられ,かなり読みやすいので,哲学に触れてみたいと思う人には最適の入門書になるだろう。

書名:『哲学からのメッセージ』,著者:木原武一
出版者:新潮社,出版年:1987年,シリーズ名:新潮選書
ISBN 4-10-600327-9,定価:1100円(税別)
NDC: 130

心理学

『精神分析ノート2 生きている人間関係』(小此木啓吾著)

本書は前著『精神分析ノート1』の続きとなるが,特に「生きている人間関係」について論じられている。 対人関係は心と心の関係だというだけではなく,そもそも心とは「もの」があって初めて生きたものとなることが強調されている。 したがって,本書では単に心の内面が描かれるのではなく,外界の「もの」とのつながりの中で心は働いているという現実主義の視点で述べられている。 「心と心」,「物になって生きる心」,「物に頼る心」,「物を超えようとする心」の全4篇から成る。 現代の若者が陥りやすい観念主義が批判されているので,特に青年に薦めたい1冊である。 新装改訂改題初版は1984年の出版である。

書名:『精神分析ノート2 生きている人間関係』10版,著者:小此木啓吾
出版者:日本教文社,出版年:1994年
ISBN 4-531-06147-0,定価:903円(税別)
NDC: 146

『フロイト その自我の軌跡』(小此木啓吾著)

精神分析は臨床の場で実際に用いられる精神療法(心理療法)の一つだが,本来は一人の人間によって,試行錯誤を経ながら生み出されてきたものである。 本書は,その生みの親である人間フロイトの自我の歩みを通して,精神分析というものを生々しく描き出している。 コカインに熱狂したフロイトは,その恐るべき力を理解した時,既に不当治療医となっていた。 その事件から本書は出発し,性愛の抑圧,フロイトの「ほれこみ」,集団幻想,山アラシ・ジレンマ,自我分裂,そして最後にフロイトの人見知りについて述べられている。 本書は全体を通して伝記的手法で書かれているので,精神分析を知らない人でも興味深く読めるだろう。

書名:『フロイト その自我の軌跡』,著者:小此木啓吾
出版者:日本放送出版協会,出版年:1973年,シリーズ名:NHKブックス;179
ISBN 4-14-001179-3,定価:922円(税別)
NDC: 146

『アドラー心理学入門 よりよい人間関係のために』(岸見一郎著)

オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーはフロイトやユングと並び称されるほどの業績を残した人物であるが,日本ではあまり知られていないようである。 そのアドラーの心理学を今日ではアドラー心理学と呼んでおり,全体論や目的論を採っている点が特徴的である。 また,アドラー心理学は単に症状を治すだけでなく,健康とは何か,幸福とは何か,といった問いに明確に答える点でも,他の心理学とは大きく異なっている。 本書では,そのようなアドラー心理学とはどのようなものかが非常に分かりやすく説明されている。 アドラー心理学は単なる理論というだけではなく,心の態度そのものである。 伝統的な考え方に対する批判もなされるが,何がお互いにとって良いのかを考えるには,アドラー心理学は格好の材料だと思う。 また,アドラー心理学の主な内容は育児や教育に関することなので,本書は育児や教育に関心がある全ての人にお薦めしたい

書名:『アドラー心理学入門 よりよい人間関係のために』初版,著者:岸見一郎
出版者:KKベストセラーズ,出版年:1999年,シリーズ名:ワニのNEW新書;012
ISBN 4-584-10312-7,定価:648円(税別)
NDC: 146.1

自然科学

『近代科学の誕生』(H・バターフィールド著;渡辺正雄訳)

16~17世紀における近代科学の誕生は,人類のものの見方に大きな変革を与えることになった。 古来からのアリストテレスの理論は覆され,宇宙は機械論的に説明されるようになった。 このような科学史上の変革は天文学や力学の分野にとどまらず,医学,化学,生物学などの分野へも浸透していったのである。 本書ではこの「科学革命」を多角的に考察し,その本質を明らかにしている。 特に,思考を転換する際に解決すべき知的難問は何だったのかを見出すことが重要であると説き,反古にされた科学の姿も理解することに努めているのが特徴的である。 本書は上下2巻からなり,読者は大学程度の人々を対象にしている。

書名:『近代科学の誕生』,著者:H・バターフィールド,訳者:渡辺正雄
出版者:講談社,出版年:1978年,シリーズ名:講談社学術文庫;288,289
上巻:ISBN 4-06-158288-7,定価:620円(税別)
下巻:ISBN 4-06-158289-5,定価:680円(税別)
NDC: 402

数学

『無限論の教室』(野矢茂樹著)

本書は,無限という概念を「可能性としての無限」という立場から考えることで,「無限」に関連する様々な話題を説明している。 それも,単にだらだらと難しく説明するのではなく,架空の授業風景を通して,時にジョークを交えながら面白く説明しているのが良い。 内容は,まず無限という概念をよく考えることから始まり,対角線論法,ラッセルのパラドックスなどを考え,そして最終的にはゲーデルの不完全性定理に至る。 本書は可能無限の立場から書かれているので,実際に学校で教えられる考え方が唯一ではないことも示してくれる。

書名:『無限論の教室』,著者:野矢茂樹
出版者:講談社,出版年:1998年,シリーズ名:講談社現代新書;1420
ISBN 4-06-149420-1,定価:660円(税別)
NDC: 410.1

『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』(高橋昌一郎著)

クルト・ゲーデルは「アリストテレス以来の天才」と呼ばれるほど,多くの業績を残した20世紀最大の論理学者である。 本書の主題は「ゲーデルの哲学」であるが,その前に,ゲーデルが証明した不完全性定理を,一般の読者でも理解しやすいように記号を使わずに解説してくれている。 そして,ゲーデルの生涯と業績を追いながら,ゲーデルが不完全性定理から導いた哲学的帰結である「反人間機械論」について解説している。 ゲーデルが導いた反人間機械論は,人間は機械であると主張する進化論者の考え方を大きく揺るがすものとなるだろう。 本書は,ゲーデルの人間性や不完全性定理について知るための入門書として最適だと思われる。

書名:『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』,著者:高橋昌一郎
出版者:講談社,出版年:1999年,シリーズ名:講談社現代新書;1466
ISBN 4-06-149466-X,定価:680円(税別)
NDC: 410.9

医学

『精神科のすべてがわかる本』(早坂繁幸著)

精神科と聞くと,何やら恐ろしいイメージを浮かべる人もいるかもしれない。 アメリカなどでは,人生の悩みを精神科医に相談しに行くことは普通に行われているそうである。 しかし日本では,昔ほどではないにせよ,精神科へ足を運ぶことに対して未だに根強い偏見があると著者は言う。 本書は,そうした偏見を取り除くための一般向けの解説書として書かれたものである。 まず精神病とは何かが述べられ,それから代表的な精神病,その他の精神疾患について,具体的な症例を用いながら説明がなされていく。 医学用語があまり出てこないので,精神科や精神疾患について初めて触れる人にも非常に読みやすくなっているのが良い。

書名:『精神科のすべてがわかる本』三版,著者:早坂繁幸
出版者:KKベストセラーズ,出版年:1999年,シリーズ名:ワニのNEW新書;003
ISBN 4-584-10303-8,定価:648円(税別)
NDC: 493.7

芸術. 美術

絵画

『フルーツバスケット』(高屋奈月著)

本書は,雑誌『花とゆめ』(白泉社)に平成10年から連載されている少女漫画「フルーツバスケット」の単行本である。 主人公本田透は,一見どこにでもいるような普通の女子高生であるが,父親を3歳で亡くし,母親も事故で失ってしまった。 しかしその不運な境遇にもかかわらず,感謝と喜びを見出そうと健気に生きる中,呪われた秘密を持つ草摩家の人々と出会う。 日常生活における彼女や草摩家の人々との,時に滑稽な,時に真摯な交流を通して,彼らが成長していく様子が情感豊かに描かれている。 ヤング・アダルト向けではあるが,人に共感するとはどのようなことか,思いやりとはどんなものか,などということを非常にうまく表現できていると思う。 ちなみに本作品は,第25回講談社漫画賞少女部門の受賞作品であることを付け加えておきたい。

書名:『フルーツバスケット』,著者:高屋奈月
出版者:白泉社,シリーズ名:花とゆめCOMICS
NDC: 726.1

関連Webサイト

日本図書館協会
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2018年11月25日更新
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