ヴィゼンディアワールド・ストーリー
 虹の翼のシルフィード


31.少年の誓い

 目次
 僕が大人だったら、もっと大きな工具だって扱えるのに。
 僕が大人だったら、もっと大きなウインドシップの整備だって出来るのに。
 僕が大人だったら、みんなに認めて貰えるのに。
 僕が大人だったら。
 ……お父さんとお母さんを、助ける事が出来たのに。

 ☆★☆

 トールは、瞼に光を感じて目を開けた。
 まだ半分くらい眠っている頭で周囲を見回す。目に移るのは薄緑色の壁、トールが暮らす野外用テントの中だ。
「もう朝かぁ」
 ぽつりとつぶやいて、大きな欠伸をひとつ。
 トールはテントを照らす陽の光を、ぼんやりと見つめていたが、寝袋からのそのそと這い出した。
 テントから顔を出すと、微かな風が朝の挨拶をするように、トールの頬へ触れて過ぎ去る。
 地平から顔を出して、天空へと上ろうとしている、大きな朝日が眩しい。かざしていた手を下げて、トールは目を細めながら朝日を顔に当てる。じりじりと肌に感じる熱は、寝ぼけている体を目覚めさせてくれるようだ。
 大きな黒い瞳へと、徐々に満ち始める生気。
 短い黒髪はぴんぴんと逆立ち、低い鼻の周りにはそばかすが散っている。 小さな体に纏う作業服はだぶだぶで、両腕と両足の裾は、幾重にも折り曲げられて長さを調節してある。
 トールは朝日に立ち向かうように、ぐっと胸を張る。
 う〜んと背伸びをして背の高い木立を見上げ、ボリボリと頭を掻きながら、また大きな欠伸をした。
 まるで、中年オヤジのようなその姿。
 テントの隣にはこぢんまりとした小さな家と、のっぺりとした白壁造りの華やかさがない四角な建物。二つの建物は、温かさと冷たさの対比を表しているようだ。
「ぷあっ」
 家の外にある冷たい井戸水で顔を洗い、首に掛けたタオルでごしごしと濡れた顔を拭った。トールはぐるりと周囲を見回して、うんうんと頷くと、またのそのそとテントに這い戻る。
 テントの奥へと、これでもかと詰め込んであるがらくた。いや、荷物の間に顔を突っ込んだ。そのまま、しばらくごそごそやっていたトールの動きがぴたりと止まる。
 荷物の中から首を出したトールの手に握られているのは真っ赤な林檎だ。トールは赤く熟れた果実を眺めて、満足そうな笑みを見せる。その大きな林檎をおもむろに左腕の袖でごしごしと擦ると、大きな口を開けてかじった。
「うんっ!」
 口の中に広がる甘酸っぱい果汁、大きな林檎一個が朝ご飯だ。トールはぶるぶるっと体を震わせて、また林檎に齧り付く。瞬く間に大きな林檎を平らげ、ぶら下げた芯を名残惜しそうに見つめた後、大きな溜息ついた。
 ぱん! と、両の頬を叩いて気合いを入れると、
「さあ、行くかぁ!」
 小さな小さなトールは、大きく大きく手足を伸ばし、リュックサックを背負う。
 大切な思い出と、悲しい思い出が詰まっている家の前で、ぴたりと足を止めたトールは振り返り、
「お父さん、お母さん。おはよう、行ってくるよ」
 黒い瞳をそっと伏せて、亡き父と母に朝の挨拶をした。
 トールが向かったのは、街にある巨大な整備工場だ。
 グランウェーバー国、北西部の街ディストリア。工業地帯として発達してきたこの街には、様々な工場が建ち並ぶ。街の上空をひっきりなしに行き交うウインドシップの数も、普通の街よりも遙に多い。
 街を渡る風が含むのは、微かなオイルの匂い。トールはこのディストリアでひとり、一生懸命に生きている。

 ☆★☆

「おいこら、トールっ!」
 大きなゲンコツを振り上げた髭面の中年男は、この整備工場の長バウムだ。鋼のような筋肉が備わっている二の腕、日に焼けた赤銅色の肌、精悍な表情。
 この工場で働くすべての整備工が尊敬し、頼りにしている人物だ。
 ディストリアでも屈指の規模を誇るこの整備工場には、運輸用のウインドシップが多数持ち込まれる。修理はもとより、安全を考慮した定期点検の為だ。
「トール! お前はまた勝手に、整備待ちしている機体の動力炉をバラしただろうがっ!」
「うえぇ、バレた!」
「こら待てっ!」
 ぱっと身を翻したトールの襟首を、バウムのごつい手がむんずと掴んだ。
「あ、いてて」
「ええい、暴れるな!」
 顔をしかめて痛がるトールに、バウムはやや手の力を緩めたが、それでも眉をつり上げて白い歯を剥き出した。
「おいトールよ、何度も言うがな。この工場で整備を待っている機体は、お客様から預かっている大切な機体なんだよ。ここにあるって事はな、現場じゃ間違いなく不自由が出ているんだ。迅速に確実に整備や修理を完了して、お客様にお返ししなくちゃならないんだ」
 不満そうな表情でぶら下げられているトールに、バウムは辛抱強く、噛んで含めるように言い聞かせる。
「分かってるよ、でも親方」
「でもじゃない。お前の気持ちは分かる、だが社会にはそれなりのルールってものがあるんだ。一流の整備士になりたかったら、そこんとこをよく考えろ!」
 まるで自分の息子に説教するように、バウムは声へと力を込める。
「いいな? あんまり言う事を聞かないと、工場への出入りを禁止するぞ!」
 バウムに念押しをされたトールは、ぽいと放り出された。
「……いてて」
 どすんと尻餅をつき、オイルが染みた工場の固い床で、したたかに打ち付けた尻をさするトールは、恨めしそうに肩をいからせて去ってゆくバウムの背中を睨む。
「おうい、トール!」
「あ、みんな」
 唇を尖らせたままのトールが声の方へと顔を向けると、勢揃いした整備工達がにやにやと笑っている。
「トールよ、またやったんだってな」
「やれやれ、あんまり親方を困らせるなよ」
「そうだよ、俺達にひとこと言えばいいだろう?」
 わらわらとトールの周りに集まった整備工達は、ぴんぴんに立った短い黒髪をわしゃわしゃと手で撫で回す。
「わああ、やめてくれよ!」
 仲間の手荒い愛情表現がくすぐったい。
 しかし嬉しさを見せるなんて、トールには気恥ずかしくて、とても出来ない。されるがままのトールは、喚きながらじたばたともがく。
 そうこうしている間に、始業の時刻になったようだ。
 工場内に、大きなベルが響き渡った。それを合図に整備工達は表情を改め、それぞれが受け持つ場所へと散ってゆく。
「ああ、もう、酷い目にあった」
 それはいつもの事なのだが、トールはのろのろと立ち上がると、だぶだぶの作業服を体に馴染ませるように揺すった。
 仕事が始まると整備工達は皆、自分が受け持つ場所で黙々と手を動かす。自らが整備する機体が、空を飛ぶ様を想像しながら、正確に仕事をこなしてゆく。
「トール! スパナだ、二十四番をくれ」
「オッケー」
 整備員達の間を、小さなトールは工具を掴んで走り回る。さすがに免許もないトールに機体の整備を任せるわけにはいかない。
 トールはこの工場で、整備工達の助手として毎日働いているのだ。
 あっちの作業場こっちの作業場へと、トールは広い工場内を走り回る。
「トール、そのラチェットレンチ持てるか?」
「へへ、軽い軽いっ!」
 顔を紅潮させて、大型のレンチを引きずる。骨惜しみしないトールが小さな体で一生懸命に働く姿は、整備工達に意欲を与えているのだ。
 頑張り屋のトールだが、ひとつだけ困った癖がある。
 修理や整備で工場に搬入された機体から動力炉を取り外し、分解してしまうのだ。
 ウインドシップの機体を構成する各部品の中で、心臓部である動力炉は重要だ。
 トールは複雑でデリケートな部品、絡み合う配管類をすべて記憶していて、分解しても元通りに組み上げてしまう。トールには、ひとつの目的があるのだが、それは法規に照らしても安全性を考えても決して許される事ではない。

 慌ただしい工場内で作業に集中していれば、時間などあっという間に過ぎていく。
「おい、トール」
「あ、親方」
 タオルで汗を拭うトールの頭を、大きな手でぽんぽんと叩いたバウムは、厳めしい顔に浮かべていた難しい表情をゆるめた。
「仕事が終わったら、俺の家に寄るんだぞ」
「えー今日もかよ。いいよ、気を使ってもらわなくても」
「馬鹿野郎、気を使ってるんじゃない!」
 いきなり落ちてきた雷に、トールは思わず首を竦めた。
「お前、毎朝林檎しか食ってないんだろう」
「ちぇ……。いいじゃんかよぅ、何を食べてても。俺は林檎が好きなんだからさ」
 口を尖らせるトールだが、本当は特に林檎が好きな訳でもない。手っとり早いし、調理をする必要もないからだ。
「いいか? お前ぐらいの歳には、きちんと食わなきゃ大きくなれん。俺の家に住めないって言うんなら、毎日ちゃんと飯を食いに来い。いいな、仕事が終わったら待っていろよ!」
「分かったよ……」
 トールは渋々と返事をする、困った顔でトールを見つめていたバウムは、大きなため息を吐き出した。
「なぁ、トールよ」
「ん〜?」手にしたスパナをいじりながら、トールは気のない返事をする。
「お前、まだ俺の家に来る気にはなれないか? 女房も待ってるんだ」
「う……ん」
 バウムと妻のミソラには子供がいない。
 ミソラは身寄りが無く、一人で暮らすトールを引き取って一緒に暮らしたがっている。しかし、誰がいくら説得したところで、トールは決して首を縦に振らない。
 何か考えるような仕草で、一度動きを止めたトールは、ぎゅっと唇を噛むと「へへへ」と笑って、鼻の頭をこすった。
「親方、何度も言ってるじゃないか。俺が家に帰らなくなったら、父さんと母さんが寂しがるよ」
「トール、お前……」
 はっと息をのんだバウムは、大きな拳をぎりっと握りしめた。
 トールにも、バウムが心配してくれているのは分かっている。しかしトールはあの家を、父と母と三人で暮らした家を離れることなど出来ないのだ。微かに残 る温かな記憶を捨て去る事がどうしても出来ない。だが、それはいつまでも悲しみの記憶がトールを縛り続けることに他ならない。
「あのな」
 バウムがなおも口を開こうとしたその時、午前中の作業を終えるベルの合図が響いた。
「あっ! 親方、昼だよ昼メシ、じゃ、俺行くからっ!」
「おいこら、トール!」
 バウムが大声で呼び止めるが、トールはスパナを尻のポケットにねじ込むと、一目散に逃げ出した。  

 ☆★☆

「慌てずに食えよ、昼休みは長いんだからな」
「うん」
 肯いたトールは大口を開けて、ホットドッグにかぶりつく。昼休みになると、毎日仲間の誰かがトールをつかまえて昼食に誘う。
 休憩所でそれぞれにくつろぎながら、他愛もない雑談に興じる。
「おい、大会の開催は今年だったよな!」
 整備工の一人が、新聞を片手に興奮した声を出した。
「大会って、何の大会だよ?」
「馬鹿! 寝ぼけているんじゃないのか?」
「あ、ああっ!」
「ウインドシップレースだ!」
 整備工達が揃って声を上げた。
「ほら、今日の新聞に記事が載ってる」
 バサバサと広げられた新聞紙を、トールは興味深い顔で覗き込んだ。
 『三年に一度開催される、ウインドシップレースの大会日程が、連盟の協議により決定した。今年のスタート地点は、グランウェーバー国のカーネリア領と発 表されており、当地が注目されている。ウインドシップを使い、決められた期日の中で、参加各国に設置されたポイントを通過しながらゴールを目指す。ウイン ドシップレースは冒険者を志す者達にとって、最大の登竜門とされている……』
 トールに読めない字があるのではないかと、声に出して記事を読んでくれた仲間の一人の顔を、トールは食い入るように見つめていた。
「さあ、どうかな? ブロウニング・カンパニーの機体って、前回も出場していないよな」
「今年は、ボーウェン社の機体で決まりだろう? あの会社の勢いだぜ、この大会に照準を合わせて来てるって!」
「ウェンリー・ホークも、出場するのかなぁ……」
「誰だよ、それ?」
「うわぁ。知らないのか、お前」
「凄いよな、優勝賞金は金貨一万枚だぜ!」
 ウインドシップレースの話題に夢中になっている整備工達は誰も、呆然と新聞記事を眺めているトールに気付かなかった。
 一日の作業が終わり皆一様に安堵した表情で後片づけをする、また明日のために。
「おい、トールを知らないか?」
「え? トールですか、その辺りに居ませんか? おかしいなぁ」
 長い柄の箒を持った整備工の青年が、辺りを見回した。
「お前、姿を見たか?」
「あれ、終業のベルが鳴る前にはちゃんと居たぞ」
 バウムにトールの行方を問われ、整備工達は皆首を捻っている。
「先に行ったのか? あいつめ、待っていろって言ったじゃないか」
 バウムは肩を落とし、明かりを落とした薄暗い工場内を、もう一度ぐるりと見渡した。

 とっぷりと日が暮れて、辺りには静けさが広がる。道に沿って連なる家々には明かりが灯り、窓から漏れる温かな光からは、ささやかな幸せを感じられる。
 夜道をとぼとぼと歩くトールは、自分を照らすそんな淡い光を横目で見やる。しかし何の表情も浮かべないまま、トールは自分の家に向かって歩いていた。 
 家に着くと緑色をしたテントの前を素通りして白壁の建物へと歩み寄る。すり減った鍵を差し込むと、やや引っかかり気味の音を響かせて鍵が開いた。
 扉のノブへと伸ばしたトールの手は、小刻みに震えて力が入らない。トールは唇を噛みしめ、しっかりとノブを握って回す。
 ガチャリと音を立てて扉が開き、暗い室内へトールは足を踏み入れた。小さな心臓の鼓動が次第に大きくなる。室内にあるのは数々の実験機器だ。この建物は、トールの父親の実験棟だった。
「……お父さん、お母さん」
 暗い研究室内にたたずむトールがぽつりとつぶやいた。まるで魂が抜けてしまったように、ふらふらと壁に歩み寄る。
 壁に貼られているのは、父と母、トールの三人の写真だ。温かな微笑み、そこには間違いなく幸せがあった。
 トールの父は研究者だった、主にウインドシップの動力炉の開発、性能の向上にその力を注いでいた。白衣を纏い、真剣な顔で自らの研究に取り組む父の姿を、トールは目を輝かせながら見つめていた。
 そんなトールの姿に、父の助手を務めていた女性研究員のレイが、
「博士、頼もしい二代目ですわね」
 と、クスクス笑いながら言う。
 父は恥ずかしそうに頭を掻いた後、トールを抱き上げて研究中である動力炉の試作品を見せてくれた。
「いいかい、トール。父さんが研究しているこの動力炉は、未来を大きく変えてくれる。この動力炉はたくさんの人や荷物を運べる力、大きな大きな翼の命になるんだ」
 父は誇らしげな笑顔で、何度も何度もトールに教えてくれた。
 しかし、トールの記憶から消える事がないあの日。
 覚えているのは視界を染める真っ赤な色、父と母が研究棟で事切れていた。
 そして、父が心血を注いでいた動力炉の試作品が、運び出されていたのだ。この事件を解決するために軍も動いたのだが、結局犯人は捕まらず、運び出された動力炉も発見されていない。
 今ではもう、この凄惨な事件は風化してしまっており、トール自身もよく覚えていない。
 幼い心はその恐ろしい事実を、奥底に沈めてしまったのだろう。
 しかし、事件の核心に迫る事が出来るかも知れない……。
 その思いを持ち続けるトールに、ウインドシップレースの話はあの日の事を思い出させるきっかけになってしまった。
「トールっ!」
 不意に、名を呼ばれて振り返る。
 研究室の戸口に、心配そうな顔をしたミソラが立っていた。顔を歪めたミソラは、ぱたぱたとトールに駆け寄ると小さな体をぎゅっと抱きしめた。
「……お、かみさん」
 トールは力無くそうつぶやいて、はじめて自分が涙を流している事に気がついた。大粒の涙がぽろぽろと黒い瞳から溢れては、頬を伝い流れ落ちる。トールがいくら我慢しようと思っても、堪えようと思っても涙は堰を切ったように止まってはくれない。
「トール。いいんだよ、我慢しなくたって。いいんだよ、思い切り泣きな。でもね……可哀想だけど、お前はここに居ちゃいけないんだ」
 ミソラは小さな体を抱きしめながら、おまじないのようにトールの耳へ囁く。
 両親の死を目の当たりにした少年の心、まだ柔らかくて傷付きやすい幼い心を、深い悲しみの鎖で縛ってしまう訳にはいかない。
 ミソラに抱きしめられたトールは、次第にしゃくりあげ始める。その声は次第に大きくなり、ついにトールは泣き出した。ミソラにしがみついて力一杯泣いた、体の中にこれほど涙があるのかと思えるほどに。
「トール、トール……」
 少年の背を優しく撫でながら、ミソラは何度もトールの名を呼ぶ。その心が、闇へと落ちぬようにと祈りながら、何度も何度も。 
 トールが泣きつかれて眠ってしまうのに、それほどの時間は掛からなかった。

 ☆★☆

「おい、もう元気出せよ」バウムは、悩み続ける妻の肩に優しく手を置いた。
「だって、あんた……」
「あいつが自分で決めた事だろう? 可愛い子には旅をさせろって言うじゃないか。駄目ならまた、ここへ帰って来るさ。自立心が旺盛なのは良い事だ」
 トールが心に秘めた想い。それは何者かに奪い去られた、父が研究していた動力炉を探し出す事だ。
 父が追いかけていた夢、母とトールも見た大きな夢。それをを捜し出すのだ。父と共に毎日研究棟に居たトールは、父が研究していた動力炉の特殊な構造をよく知っている。
 だからトールは、バウムの整備工場で数々の機体の動力炉を分解しては確かめていたのだ。
 しかしいくら探しても、あの特殊な動力炉を見つけることは出来なかった。
 ウインドシップレース。この希な機会に、父が研究していた動力炉を組み込んだ機体が出場するのではないか。雲を掴むような話だが、トールにはそんな予感がするのだ。
「それに、復讐だなんて事になったら」
「いや。俺はトールの瞳に、そんな物騒な輝きを感じないな」
 バウムは、妻の肩に置いた手に力を込めた。
「あいつは、そんな馬鹿な真似をしやしないさ、悲観的な見方はやめよう。運命ってヤツかな、あいつにとって良い出会いがあるかもしれない」
 目を細めたバウムの口調は、自分の息子の成長を信じ、喜んでいるかのようだった。

 少年が流した涙は心を大きく成長させ、ひとつの決心をさせた。
 涙を拭った少年は自分の意志で、自分の足で広い広い世界に旅立った。
 ウインドシップレース。その大きな舞台で「SHILFEED」という父が温め続けていた夢を、未来の翼の命を探すために。
 
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