モルモン（末日聖徒イエス・キリスト教会の教会員）は本当に彼らが主張するようにクリスチャンなのかどうかについて，彼らが聖典としている聖書に基づいて説明してみたいと思います。 新約聖書には次のような聖句があります。
偽り者とは，イエスがキリストであることを否定する者でなくてだれでしょう。 御父（みちち）と御子（みこ）を否定する者，それが反キリストです。
（『聖書 新改訳2017』ヨハネの手紙 第一 2章22節）
この聖句は，イエスがキリストであることを否定する者こそが反キリストだと言っています。 モルモンはこのみことばを聞くと，「私たちはイエスがキリストであることを否定していません」と言うでしょうが，彼らは「イエスがキリストであること」の正しい意味を理解していません。 使徒ヨハネはこの聖句を書いた時，自分が書いた福音書の，以下の聖句が頭にあったと思われます。
「わたしと父とは一つです。」
（『聖書 新改訳2017』ヨハネの福音書 10章30節）
イエスは彼に言われた。 「ピリポ，こんなに長い間，あなたがたと一緒にいるのに，わたしを知らないのですか。 わたしを見た人は，父を見たのです。 どうしてあなたは，『私たちに父を見せてください』と言うのですか。」
（『聖書 新改訳2017』ヨハネの福音書 14章9節）
ヨハネの福音書10章30節のみことばと14章9節の「わたしを見た人は，父を見たのです」というみことばは，文脈から考えると，「イエスは父なる神と本質において同一の神であるが，父なる神とは区別される人格を持っておられる」という意味になります。 これは「父なる神とイエスが別個の存在である」という意味ではありません。 父なる神と御子イエスは，本質において同一の唯一の神として存在しているのです（三位一体論参照）。 しかし，モルモンはこの聖書の教えを否定し，「父なる神とイエスは別個の存在である」と主張しています。 これは聖書の教えに反した主張です。 モルモンは，「聖書は神のことばである」と言いながら，聖書の教えを否定しているのです。 これは矛盾です。 つまり，モルモンの信じるイエス・キリストは聖書に登場するイエス・キリストではなく，全くの別人なのです。 また，ヨハネは他の箇所でも反キリストの定義をしていますので，そちらも引用しておきます。
愛する者たち，霊をすべて信じてはいけません。 偽（にせ）預言者がたくさん世に出て来たので，その霊が神からのものかどうか，吟味しなさい。
神からの霊は，このようにして分かります。 人となって来られたイエス・キリストを告白する霊はみな，神からのものです。
イエスを告白しない霊はみな，神からのものではありません。 それは反キリストの霊です。 あなたがたはそれが来ることを聞いていましたが，今すでに世に来ているのです。
（『聖書 新改訳2017』ヨハネの手紙 第一 4章1～3節）
こう命じるのは，人を惑わす者たち，イエス・キリストが人となって来られたことを告白しない者たちが，大勢世に出て来たからです。 こういう者は惑わす者であり，反キリストです。
（『聖書 新改訳2017』ヨハネの手紙 第二 7節）
新約聖書を読むと，神の子と呼ばれるイエス・キリストは，本質において父なる神と同一であり，位格において区別されるお方である。そのお方が処女マリアから人としてお生まれになったことが分かります（三位一体論参照）。 これが「イエスがキリストであること」の正しい意味です。 イエスをそのように告白しない者は，人を惑わす者であり，反キリストであると，ヨハネは明確に述べています。 （ヨハネが述べた「反キリスト」とは，第一義的にはグノーシス主義者を指すと考えられます。 彼らはキリストの受肉やキリストの神性を否定していました。 その適用として，キリストが唯一の神ご自身であることを否定するモルモンも，ヨハネの言う「反キリスト」に含まれると言って良いと私は考えます。） モルモンは，イエスを父なる神と同一本質であるとは告白しないので，聖書の教えから，彼らは本当はクリスチャンではないことが分かります。 彼らは自分たちのことを「クリスチャンです」と主張しますが，聖書によると彼らは本当はクリスチャンではないのです。 したがって，聖書を本当に神のことばだと信じるのなら，モルモンは誰一人として救われていないことになるのです。 何という悲劇でしょうか。
モルモンでない人向けに作られたMormon.orgというWebサイトがありますが，このサイトによると，イエス・キリストはベツレヘムで生まれたと書かれています。 これは聖書の記述と一致します（マタイ2:1，ルカ2:4～7参照）。 （正確に言えば，ユダの地にあるベツレヘム，すなわち「ユダヤのベツレヘム」です。 ベツレヘムという名前の町はユダの地だけでなく，ガリラヤ（ゼブルン族の相続地）にもありました（ヨシュア19:15参照）。 したがって，マタイやルカはきちんと区別するために，「ユダヤのベツレヘム」と書いたと思われます。） しかし，末日聖徒イエス・キリスト教会の聖典の一つである『モルモン書』によれば，キリストはエルサレムで生まれるとはっきり書かれています。 その証拠を以下に引用しておきます。
そして見よ，神の御子（おんこ）は，わたしたちの先祖の地であるエルサレムで，マリヤからお生まれになる。 マリヤは聖霊の力により覆われて身ごもり，男の子，まことに神の御子（おんこ）をもうけるおとめであって，尊い，選ばれた器である。
（『モルモン書』アルマ書 第7章10節）
実際には，キリストがお生まれになったのはユダヤのベツレヘムです。 したがって，『モルモン書』には偽（にせ）預言が含まれていることになり，とても神のことばとは言えません。 このことからも，『モルモン書』は神のことばではなく，無知な人間によって書かれたと考えるのが正しいと思います。 このような基本的なことさえ間違っているのですから，『モルモン書』を聖典とする末日聖徒イエス・キリスト教会の教理（特に救済論）は間違っていて，信じる価値がないとしか言えません。
Mormon.orgの「わたしたちの信条」や「FAQ（よくある質問）」には聖書の記述や歴史的事実と矛盾することがたくさん書かれています。 これらからも，末日聖徒イエス・キリスト教会の教えは聖書からずいぶんかけ離れた物だと分かりますが，特に重要な点について指摘しておきたいと思います。
彼らの聖典の一つである『高価な真珠』によると，末日聖徒イエス・キリスト教会の信仰箇条は13ありますが，その3番目の「わたしたちは，キリストの贖罪により，全人類は福音の律法と儀式に従うことによって救われ得ると信じる」というのは，聖書の教える救いの条件とは全く異なります。 聖書は一貫して「信仰義認」を主張しています。 救われるためには信じるだけで良く，何の行いも必要ないと，聖書は教えています。 以下に，その根拠となる聖句を三つ挙げておきます。
しかし，人は律法を行うことによってではなく，ただイエス・キリストを信じることによって義と認められると知って，私たちもキリスト・イエスを信じました。 律法を行うことによってではなく，キリストを信じることによって義と認められるためです。 というのは，肉なる者はだれも，律法を行うことによっては義と認められないからです。
（『聖書 新改訳2017』ガラテヤ人への手紙 2章16節）
この恵みのゆえに，あなたがたは信仰によって救われたのです。 それはあなたがたから出たことではなく，神の賜物です。
行いによるのではありません。 だれも誇ることのないためです。
（『聖書 新改訳2017』エペソ人への手紙 2章8～9節）
人は律法の行いとは関わりなく，信仰によって義と認められると，私たちは考えているからです。
（『聖書 新改訳2017』ローマ人への手紙 3章28節）
もし末日聖徒イエス・キリスト教会の信仰箇条が正しければ，イエスと共に十字架につけられ，回心した一人の強盗は，もはや何の儀式も行うことができなかったので，いくら悔い改めても救われなかったことになります。 しかし聖書（ルカ23:43）によると，イエスは十字架上で彼に次のように言われました。 「まことに，あなたに言います。 あなたは今日，わたしとともにパラダイスにいます。」 つまり，この回心した強盗は，聖書によれば救われたことになります。 これは矛盾です。
末日聖徒イエス・キリスト教会は，聖典として聖書以外に，『モルモン書』『教義と聖約』『高価な真珠』という書物を付け加えています。 これは，聖書によれば罪です。
私は，この書の預言のことばを聞くすべての者に証しする。 もし，だれかがこれにつけ加えるなら，神がその者に，この書に書かれている災害を加えられる。
（『聖書 新改訳2017』ヨハネの黙示録 22章18節）
「この書」というのは，単にヨハネの黙示録だけを指しているのではなく，聖書全体のことを指していると考えられます。 理由は，ヨハネの黙示録が聖書全体の要約になっているからです。 したがって，聖書を神のことばと信じて聖典にするなら，聖書の他に聖典があってはならないのです。 ここにも末日聖徒イエス・キリスト教会の矛盾が見られます。
以上のことから，末日聖徒イエス・キリスト教会は矛盾だらけの教理を持っていることが分かります。 また，彼らのキリスト論は間違っているので，モルモンはクリスチャンではありません。 彼らはキリスト教の一派ではなく，悲しいことに「滅びをもたらす異端」（2ペテロ2:1）だということになります。 どうか，彼らが自分たちの教理の間違いに気づいてくれますように。